2024年上半期を振り返る: プログラマティック広告 市場とメディア業界の動向
契約か訴訟か:AI企業との向き合い方はパブリッシャー次第
ことしの上半期には、多くのパブリッシャーがAI企業と新たなコンテンツライセンス契約や技術開発契約を結んだ。大手の例としては、ヴォックスメディア(Vox Media)、アトランティック(The Atlantic)、ドットダッシュメレディス(Dotdash Meredith)、ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)の親会社であるニュースコープ(News Corp)などが挙げられる。 契約条件の大部分は伏せられているが、少なくともパブリッシャーが手っ取り早く資金注入を確保できることは明らかだ。なかにはもっと大きな利益をもたらす契約もある。 WSJが5月に報じたところによると、ニュースコープとオープンAI(OpenAI)が結んだ契約は5年間で総額2億5000万ドルにのぼるという。 それでも、すべてのパブリッシャーが高額の小切手に心を動かされるわけではない。ニューヨークタイムズカンパニー(The New York Times Co)はこれまでに、オープンAIを相手とする訴訟に100万ドルを費やした。 そして著作権を侵害されたとしてAI企業を提訴しているのはニューヨークタイムズだけではない。非営利の報道機関であるセンター・フォー・インヴェスティゲイティヴ・ジャーナリズム(Center for Investigative Journalism)も6月末にマイクロソフトとオープンAIを提訴している。
バズフィードによるコンプレックス売却
米デジタルメディア大手のバズフィード(BuzzFeed)がコンプレックスネットワークス(Complex Networks)を売りに出すと最初に報じられたのは昨年末のことだが、ことし2月にはこの計画が現実のものとなった。 多額の負債を抱えていたバズフィードは、フードカルチャーメディアの「ファースト・ウィ・フィースト(First We Feast)」と「ホット・ワンズ(Hot Ones)」を除くコンプレックスネットワークスの大部分をライブコマースプラットフォームのNTWRKに1億860億ドルで売却した。 2021年にバズフィードがコンプレックスを買収した際に支払った金額を大きく下回る売却価格である。ブルームバーグ(Bloomberg)の報道によると、バズフィードはファースト・ウィ・フィーストの売却も検討しており、現在7000万ドルの価格を提示しているが、いまのところ買い手は見つかっていない。 コンプレックス売却の主な目的は総額1億ドル超の負債を返済することだった。「モノいう株主」として知られる元米大統領候補のヴィヴェック・ラマスワミ氏はこの数カ月のあいだにバズフィード株を取得し、現在8.9%に相当する同社株式を保有している。同社の支配権争いでもこの負債が駆け引きに使われているようだ。