火星に印象的な「枯山水」、NASA探査機が発見
火星に関していえば、この惑星の科学と美しさの両方を味わえる場所がある。NASAの周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)は、研究者が火星を視覚化して理解するのを支援することに関して、卓越した役割を演じている。また時には、詩の世界に入り込んだような画像を地球に送信してくることもある。周回軌道上から撮影した、ダエダリア高原の最新画像がそうだ。MROの運用チームは「本日の画像」と題した7日付の特集記事で「この地形は、まるで日本の枯山水のように熊手で溝を掘ったように見える」と記している。 【画像】火星の枯山水模様の地形、その接近画像 ダエダリア高原は、タルシス地域にある巨大な火山のアルシア山の溶岩流から生じた。MROチームは今回の画像で、明るい岩塊が複数の湾曲した列をなして並んでいるとして、この構造は指紋にも似ていると表現している。接近して見れば、指紋の渦状紋のような模様が浮き彫りになる。 このような模様は、火星では他にどこにも見られない。MROチームは「何らかの作用により、より大きい岩塊とより細かい土が選別・分離されたことは明らかだ」と説明する。「その作用が正確に何なのかは、不可解な謎を提示している」 この魅惑的な地形は、標高5455mで発見された。比較すると、米アラスカ州にあるデナリ(マッキンリー)山の標高6190mには少し及ばない。火星のタルシス地域は、かつて火山活動が活発な場所だった。長年にわたり、探査機による調査が実施されている。欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレスは、この地域の変化に富んだ特異な地形を広範囲にわたって画像に収めた。 地球にある日本の禅庭園は、砂や砂利を熊手でかいて曲線模様を描き、岩石や樹木や植物などの地物と相互作用させることで造られる。では、火星ではこの奇妙な模様がどのようにしてできたのだろうか。MROチームは「粒子サイズの対流」説について説明している。大小さまざまの粒子の混合物が、振動や凍結融解サイクルにさらされると、粒子が大きさによって選別・分離される可能性があるという現象だ。ダエダリア高原の岩塊と土には、この現象が起きているのかもしれない。「もしタルシス地域の内部がいまだに活動的で鳴動しているなら、ダエダリア高原の地震動が起きている可能性がある」と、MROチームは述べている。