北米では世界遺産を避けて地下へ、路面〝電車〟でもない? 宇都宮ライトレール開業で注目のLRT「鉄道なにコレ!?」【第51回】
栃木県で8月26日に開業した次世代型路面電車(LRT)の宇都宮ライトレール(愛称ライトライン)は、1997年に廃止されたJR信越線横川(群馬県)―軽井沢(長野県)間にあった碓氷峠(うすいとうげ)に迫る急勾配が注目を浴びた。一方、北米のLRTでも地下に潜って国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産の名所の下をくぐったり、路面電車の一部という定義に当てはまらない運行形態だったりと個性的な路線がひしめいている。(共同通信=大塚圭一郎) ※筆者が音声でも解説しています。各種アプリで、共同通信Podcast【きくリポ・鉄道なにコレ!?特別編7】を検索してお聴きください。 【LRT】英語の「Light Rail Transit」の頭文字の略で、「次世代型路面電車」などと呼ばれる。都市部では自動車と共用する併用軌道を走り、線路を敷設できる用地がある近郊区間ではLRT車両だけが走る専用軌道を設けることが多い。近郊の住宅街から都市部へ向かう通勤通学客らが利用しており、近郊の停留場を発着する路線バスと乗り継いだり、隣接した駐車場に止めたマイカーと乗り換える「パーク・アンド・ライド」を活用したりするケースが目立つ。
米国とカナダの北米では約30都市圏でLRTが走っており、導入した都市では中心部へ流入する自動車が減り、脱炭素化が進むといった効果が出ている。公共交通機関としては建設費が比較的低いのも利点で、国土交通省によるとLRTの一般的な整備費は1キロ当たり20億~40億円と、モノレール・新交通システムの100億~150億円、地下鉄の200億~300億円を大きく下回る。 ▽カナダ版「グリーンムーバーマックス」!? 宇都宮駅東口と芳賀・高根沢工業団地(栃木県芳賀町)の14.6キロを結ぶ宇都宮ライトレールには最大で60パーミルと、1000メートル進んだ場合に60メートル登る勾配がある。碓氷峠の最大勾配だった66.7パーミルに迫り、急な坂を上り下りする様子が注目を浴びている。 同じようにLRTがかなり起伏のある勾配を通るのを、筆者は今年9~10月に訪れたカナダの首都オタワで体験した。オタワ・カールトン地域交通公社(OCトランスポ)が運行するLRT(愛称「O―トレイン」)のオタワを東西に結ぶ12.5キロの路線「コンフェデレーション線」が、途中のオタワ大学停留場から西へ向かう際に坂を下って地下に潜ったのだ。