北米では世界遺産を避けて地下へ、路面〝電車〟でもない? 宇都宮ライトレール開業で注目のLRT「鉄道なにコレ!?」【第51回】
この路線は2019年9月に開業した。お年寄りや車いす利用者らが乗降しやすいように客室床面を低くした超低床電車を造ったのはフランスの鉄道車両メーカー大手、アルストムだ。四つの車体が連なった編成を2編成つないで運行している。 カナダ国旗をほうふつとさせる白と赤で装飾したコンフェデレーション線とは色使いが異なるものの、外観は広島電鉄が路面電車に運用している5100形「グリーンムーバーマックス」と似ている。 そんな路面電車風の車両が地下区間へと入り、中心部では地下鉄のように運用しているのが面白い。地下を走る構造になったのは、オタワの代表的な観光スポットとなっているユネスコの世界遺産「リドー運河」が影響している。 ▽世界遺産の下、地中に潜るLRT リドー運河はオタワとオンタリオ湖畔の古都キングストンの202キロを結んでおり、「米英戦争後に米国が侵略してきた場合の防衛のために6年間という比較的短期間で造られて1832年に完成した」(管理するカナダ国立公園局)という。「オタワ中心部ではリドー運河以来の大規模な輸送インフラ」(オタワ市)と位置付けられたコンフェデレーション線の建設で難関となったのが、リドー運河の存在だった。
オタワ中心部のリドー運河に架かる橋は自動車の通行量が多く、ただでさえ渋滞も起きている中でコンフェデレーション線の複線の線路を設けて車線を減らす余裕はない。周囲には連邦議会議事堂の改修のために議会上院が暫定的に使っている旧オタワ中央駅舎、まるで城のようなたたずまいの名門ホテル「フェアモント・シャトー・ローリエ」といった歴史的建造物がひしめいているため鉄道橋を新設する空間もないのが実情だ。 そこでコンフェデレーション線は中心部では地下を走る構造となり、世界遺産を見上げるように運河よりも深い地中を通ることになった。 地下に乗り入れるLRT路線はカナダの隣国で、筆者が駐在している米国にもある。東部マサチューセッツ州ボストンや西部カリフォルニア州ロサンゼルス、ニュージャージー州ニューアークが一例で、これらの路線では日本の鉄道車両メーカー、近畿車両(大阪府東大阪市)が製造した電車が活躍している。