熱中症「梅雨明け前のこの時期がいちばん危険です」死なないためにできることは【医師に聞く】
気温がぐんと上がり、熱中症リスクが増加する季節に入りました。 「熱中症は深刻化しており、昨年度は9万人を超える搬送者が出ました。沸騰化している日本で熱中症をなくすのは難しいのですが、せめて重篤な副作用を起こさない状態で済ませるための啓もうをしていく必要があります」 【画像ギャラリー】絶対覚えて!命を守る熱中症対策 そう語る早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室教授 医師・博士(医学)永島計先生に今年の傾向と対策を聞きました。
なぜ熱中症は起きるのか?
「ヒトは産生熱と熱放出のバランスをとることで深部体温を37度に保ち、生命活動を維持しています。体温調節機能が働くには汗が重要。かつ、汗の元になる体水分を常に保つことが体温調節機能、ひいては体の機能の維持のため重要です。汗で体温調節するのはヒトだけではないかと言われているのです」 【熱中症対策の3原則】 ・暑熱順化 熱くなる前からの準備。暑さに強い体を作る ・水分補給 効果的な水分補給で対水分を維持。脱水を防止 ・内部冷却 体温への直接アプローチ。なってしまって体温が上がった時の対応 この3つが揃ってはじめて熱中症に備えることができると永島先生。水分補給だけではダメなのでしょうか? 「人の深部体温は約37度に保たれています。37度は生命活動に欠かせない酵素が最も活性化する温度で、37度より高温、低温になると酵素活動が保てず脳や体の働きが低下します。熱産生と熱放散のバランスがとれてはじめて、体温調節ができます」 夏以外の季節の、たとえば安静+温度中性域(28~31度)の状態では熱バランスをとるための仕組みは強くは働いていません。ヒトにとっての快適な環境とは服を着て軽作業をしていて25度くらいで、体深部の体温37度と環境温度は12度くらい違うものなのだそう。 「発汗による熱放散は、100gの汗の蒸発で体温の1度上昇を防ぎます。体温37度で10分歩いた場合、汗が出れば37度を保ちますが、仮に出ないと38度まで上昇します。およそ10分で100g程度の蒸発を繰り返している、と記憶してください。汗腺はもともとすべりどめでしたが、こうして熱放散を助けるようになりました。発汗し、水とナトリウムを失いながら体温調節をするのがヒトなのです」 では、その原資となる水分はどのように摂取し、また排出しているのでしょうか? 「食物1、飲料水1.2、体内で作られる代謝水0.3、計2.5リットル。ですから、食事をとるのはとても大切な行為です。いっぽうの排泄は、尿1.5、大便0.1、皮膚や呼吸0.9、計2.5。このように、水は常に、かつ動的に失われています。尿だけではなく時々刻々とどこかで出入りしているのです。睡眠497g、通勤340g、長時間座位210g、入浴(41度15分)822gと、意外と損失します」 人の60%は水でできています。大まかに、筋肉40%、間質液15%、血漿など5%。つまり、筋肉は水分を貯蓄する場所でもあるのです。女性と老人は熱中症リスクが高いとされますが、その理由も明快。女性は脂肪が多く筋肉が少なく、また高齢者は加齢により筋肉が少ないため、どちらも身体の含水量が減り、結果的に脱水リスクが高まるとのこと。