熱中症「梅雨明け前のこの時期がいちばん危険です」死なないためにできることは【医師に聞く】
絶句…「頭が痛くなってきた」とき、すでに50㎏女性なら2.5リットルもの水分を失っている
よく「熱中症かもという状態になったんだ」という体験を話す人が、「体が熱くて、頭が痛くなってきて」と表現します。その状態がどのような段階なのかを、失った水分量で並べていくと…… ■脱水時に現れる症状(初期体重の%水分) 3% 口喝、唇の乾燥 4% 体温上昇、皮膚の紅潮、尿量の減少と尿の濃縮 5% 頭痛、体のほてり 6~7% めまい、チアノーゼ、高度な口渇、口内乾燥、乏尿 8~10% 身体の動揺、痙攣 11~14% 皮膚乾燥、舌の膨化、嚥下困難 15~19% 排尿痛、目のかすみ、難聴、舌の縮小 20%以上 無尿、死亡 驚くことに、頭痛が出た時点ですでに中度以上の熱中症と考えられます。過去にありませんか? 日中暑いところにいて、帰宅してから頭が痛いという経験。なんだか具合がよくないな、という状態をあなどってはならないのです。
まだ真夏ではない「梅雨明けまでの間」が熱中症の発生ピークである理由
「水を飲むのは大事ですが、自分の体を強くして、暑さに耐性を付けることも必要です」と永島先生。 熱中症とは、暑熱環境や活動によって体温上昇・脱水が起きた結果、体水分バランス・体調節機能が低下し起こります。 「脱水で深部体温上昇が起きて、やがて元に戻らない麻痺などの障害、そして死が起きるのがいちばん悪いパターンです。こうも暑いと軽度の脱水は日常茶飯事になりつつありますが、口喝や唇の乾燥、体温上昇などの段階で気づくようにもなります。体水分バランスを保ち、体温調節機能を維持することが重要です」 ところが、不思議なことに、7月半ば以降は暑さが続いても熱中症の搬送数は減っていくのだそう。いま、梅雨明け前で気温の上がった時期がピークなのです。 「暑さに長くさらられることで、暑さへの慣れが起きるのではないか、と考えられています。暑さが本格化するに従って対策を学習するなど、行動面での対策もあるのかもしれませんが、それらも込みでこれを『暑熱順化』と考えています。問題は、これが翌年またリセットされ、ゼロからのスタートになる点なのです」 もうひとつ、それほど知られていないことですが、実は「食べること」でも暑熱順化が可能。運動直後にたんぱく質+糖質を摂取することで血漿量が増加し、体温調節機能が改善され、発汗速度や末梢血管の拡張能力も5日で高まるそうです。高齢者も8週間の継続で改善されるとのこと。 「暑熱順化できていても、脱水を起こしたら台無しです。体温調節機能が働かなくなりますから、まずは脱水にならないことが最優先。暑熱順化の際、運動と栄養補給を意識することが、血漿量の増加や体水分を貯蔵しておく筋肉量の増加につながり、体水分のリザーバーを大きくすることも期待できます」 水分のリザーバーである筋肉を大きくすることが、案外と重要なのですね。