「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムのオフィスへ。なぜソリッドなデザインにこだわったの?|グッドカンパニー研究 Vol.10
「フィットする」経営が示すグッドカンパニーの姿
横石:日本の会社の場合、組織のシステムとしては冷たいのに、なぜか対応には甘さがあったりするものですが、クラシコムはまさに厳しくもあたたかい組織という感じがします。 最後の質問になりますが、改めて青木さんが考えるグッドカンパニー、いい会社とはどんな会社だと思われますか。 青木:いい・悪いの定義は難しいですね。ただ、僕らはミッションとして「フィットする暮らしをつくる」ことを掲げているので、そのミッションに矛盾がないということが僕らにとっての正しさである、とは言えると思います。 そうなると、フィットする働き方、フィットするビジネスができているかどうかが、いい・悪いを判断する基準になりますよね。この場合の「フィットする」というのは、必ずしも優しいとか甘いとか、豊かということではなく、「現状に無理がない」ということだと思うんです。 自分たちの持ち物を丁寧に観察して、その持ち物にあった、できれば借り物ではないやり方で、よく考えて納得しながらものごとを進めている。それができる会社は「フィットするやり方を模索している」という感じがするし、素敵な会社だなと感じます。 その場所なりの美しさや、その条件なりの心地よさは、工夫を重ねていけばつくることができる。あくまで観光客としてですが、北欧でそう確信できたことは、僕にとってすごく大きな出来事でした。
<グッドカンパニーとは|取材を終えて>
取材した日は、かなりの雨が降っていたにもかかわらず、なぜかオフィスの中は柔らかく温かな自然光に満たされて、妙な居心地のよさを感じた。北欧エリアでは、日照時間が短いために太陽は特別な存在であり、暮らしにその恩恵を最大限に取り組む工夫がなされるという。クラシコムの新オフィスも同様に、太陽を味方にするように設計され、窓や照明をはじめ陽の光を最大限に活かし、そこにいる人々の営みを支えていた。これまで多くのオフィスを訪れたが、とても不思議な感覚だった。大袈裟ではなく、しばらくすると、まるでその空間に身体が引き寄せられるような気がしてくる。童話「北風と太陽」ではないのだけれど、コロナ禍を経て、多くの会社が半ば強制的に従業員をオフィスに戻そうと試みる中、その真逆のアプローチにも見えるのがまたおもしろい。青木さんとはそんな話をしたわけではないが、ここでも空間に込められた思想を感じ取ることができた気がして、また再訪できる日が待ち遠しくて仕方ない。(横石 崇) 連載「グッドカンパニー研究」を読む>> ※ ヒューマンファースト研究所(HUMAN FIRST LAB): 野村不動産株式会社が2020年6月に設立。企業や有識者とのパートナーシップのもと、人が本来保有する普遍的な能力の研究を通じて、これからの働く場に必要な視点や新しいオフィスのありかたを発見、それらを実装していくことで、価値創造社会の実現に貢献する活動を行なっている。 制作協力:ヒューマンファースト研究所(野村不動産) 聞き手: 横石 崇 文: 田邉愛理 撮影: 千葉顕弥
田邉愛理