誕生から40年、孫悟空のパワーは相変わらず…世界を揺さぶり続ける「ドラゴンボール」(前編)
「七つのドラゴンボールを集めて呪文を叫べば…神竜(シェンロン)が現れて、どんな願い事でも必ずかなえてくれるのだ」 【写真】韓国初「ドラゴンボール」ポップアップストアと「ドラゴンボール」好きで有名な大谷翔平選手 2024年11月第3週の週末、ソウル・蚕室は、ドキドキするこの約束をまだ胸の奥に秘めた「大人たち」で混み合っていた。韓国初の「ドラゴンボール」ポップアップストアがロッテワールドモール1階に登場した。誕生から40周年になるからだ。グッズのほとんどが一瞬で売り切れになった。男気あるちびっこの孫悟空が仲間たちとドラゴンボールを探しに出かける、成長漫画の定石。販売部数は既に3億部を突破し、ゲーム・映画などにアレンジされ、世界で30兆ウォン(現在のレートで約3兆2000億円。以下同じ)相当の売り上げを記録している不朽の名作。この日、実物を再現した「ドラゴンボール」天下一武道会の会場前で「エネルギー波(かめはめ波)」を叫びながら、老若男女が両手を力いっぱい前に突き出したわけはここにある。
韓国最大のファンコミュニティー「フォーエバー・ドラゴンボール」を運営するソ・ビョンフンさん(42)も、この場にいた。「父に初めてプレゼントされたコミックでした。内気な子どもだったんです。でも友だちと一緒に集まってページをめくりながら交流できました。子どものころ好きだったものは、消えてしまったり忘れられたりするものですが、今も残っていてくれて感謝の思いです」。ちょうど、2024年は「青い竜」を意味する甲辰(きのえたつ)の年。不惑の年を迎えても「ドラゴンボール」は堅調だ。2024年に登場したコラボ商品を見るだけでも、それが分かる。「ドラゴンボール・アイスクリーム」(バスキン・ロビンス)、「ドラゴンボール・キーボード」(ロジテック)、「ドラゴンボール・スナック」(ロッテマート)、「ドラゴンボール・パン」(SPC三立)…。登場するなり、ファンが押し寄せる。伝説は終わっていなかった。 ■傑作の誕生、ジャッキー・チェンの映画「酔拳」のおかげ? 「元気玉」という単語を聞いたことはおありだろうか。地球の全ての生命に縁を頼って力をもらい、巨大なエネルギーの塊を形成する「必殺技」。「“気”を集める」(トイレでもしばしば必要になる)だとか「精神と時の部屋」(試験期間になるたび切に欲しくなっていた場所)といった表現も、もはや聞き慣れたものだ。出典はどれも「ドラゴンボール」。怒ると体から神秘的な炎が立ち上り、空を飛び回り、瞬間移動や、都市一つくらい軽く吹き飛ばしてしまう掌風(かめはめ波)まで…でたらめ放題ではあるが、その後のあらゆる格闘漫画の礎石となった面白さの要素だ。