有元葉子さんの「おいしいものは体にいいのよ」初夏にいただく、はすの白いちらしずし
「おいしいものは身体にいいのよ」。有元葉子さんはしばしばこの言葉を口にする。「野菜が身体にいいのはもちろんです。ただ、運動したら、肉や揚げものをたっぷり食べたいし、疲れたときには甘いものが欲しくなります」と有元さん。 有元葉子さんの「はすの白いちらしずし」レシピを写真で見る 「見知らぬ土地で、スマホ頼みではなく、太陽の位置や見える景色を頼りに歩くと認知機能が高まると聞きました。食べることについても同様に、自分の身体の声を頼りにしてはいかがでしょう」有元葉子さん直伝の、真っ当においしく、体にやさしい、理にかなった調理法と食べ方をお届けします。
ちらしずしを、さっとおいしく仕上げる知恵
■具は季節の食材を2~3種類。メープルシロップを使ったすし酢で上品な味わいに。 「ちらしずしは大変、という声を聞きますが、私は季節の食材を使い、1年を通してよく作ります」。有元流ちらしずしは、さっとおいしく仕上げる知恵がたくさん。簡単&時短のポイントをご紹介しよう。 ポイントその1。すし酢の甘みに、砂糖ではなくメープルシロップを使う。砂糖を溶かすために温める必要がなく、酢、メープルシロップ、塩を混ぜるだけで、すぐに味を決められる。また、メープルシロップのすっきりした甘みで、酢飯が上品な味に。 ポイントその2。具をそれぞれ下ごしらえして用意するのは大変だが、有元さんは2~3種類で充分と言う。今回は、れんこんとしらすだけ。冷蔵庫にちょうど細ねぎがあったので、直前に味のアクセントとして加えたが、なくてもよい。「たくさんの具材を揃えて作るちらしずしはご馳走ですね。でも、具は少なく、ささっと作るふだんのちらしもいいものですよ。これからの季節なら、新生姜、きゅうり、大葉、筍、木の芽、炒りごまなどから2~3種類組み合わせるだけ。もちろん、これに鯛や鯵、穴子、卵などを加えれば、豪華になりますね」。 ポイントその3。具を混ぜ込む作業によって米の粘りが出てしまうので、酢飯と具を重ねるだけに。今回は、酢飯の上に具材を重ね、酢飯ごとしゃもじで上下をひっくり返し、さらに残りの具を重ねて完成させた。器に盛るのであれば、酢飯→具材→酢飯→具材と重ねるだけでもよい。 ポイントその4。水を張ったボウルを必ず用意する。しゃもじや菜箸を水に濡らしながら使うと、ご飯がくっつかず美しく盛り付けできる。 手軽で清々しく、初夏にぴったりなちらしずし、すぐにでもトライしてみてほしい。 <材料 作りやすい分量> 米 3合 すし酢 千鳥酢 75cc メープルシロップ 大さじ2 塩 小さじ2/3 酢ばす れんこん 適量 すし酢 上記と同量 しらす 両手一杯分 千鳥酢 適量 細ねぎ 適量 <作り方> 1 ご飯をいつもより硬めに炊く。すし酢の材料を合わせる(酢ばす用も必要なので2倍量作る)。ご飯が炊き上がる直前に、飯台を水で湿らせ、余分な水分をふきんでふきとる。飯台とぬれぶきん、水を張ったボウルとしゃもじ、すし酢、うちわをあらかじめセットしておく。 2 炊き上がったご飯を一気に飯台にあける。熱々のご飯にすし酢を回しかけ、しゃもじでご飯を切るようにさっと混ぜる。うちわであおぎながら、ご飯をそっとひっくり返し、粗熱をとる。この作業には、水を張ったボウルが必須。しゃもじや菜箸を水に浸けながら作業すれば、ついたご飯が取れやすく、ひっつきにくい。 3 すし飯ができたら、ぬれぶきんをかけておく。 4 米を炊いている間に酢ばすを作る。れんこんは皮をむき、スライサーで薄切りにする。たっぷりのお湯を沸かし、酢少々(材料外)を加えて、れんこんが湯の中で踊るくらいの強めの中火で透き通るまでゆでる。 5 4のれんこんをざるにあげ、すし酢に漬ける。 6 しらすは千鳥酢に漬けておく。細ねぎは小口切りにする。4のすし飯が人肌ほどに冷めたら、具をのせていく。まず細ねぎを全体に散らし、しらすを全部のせる。 7 5の酢ばすをキッチンペーパーに一旦おいて、水分を軽くとり、半量を全体にのせる。 8 しゃもじで全体をそっとひっくり返していく。このとき、混ぜないようにすること。 9 残りのしらす、酢ばすをのせて完成。しゃもじでそっとすくって器に盛る。 有元葉子(ありもとようこ) 料理家。素材を生かしたシンプルで力強い料理と、環境にも配慮した心地よい暮らし方に多くの共感が集まり、著書は100冊を超える。使いやすく美しい調理道具「ラバーゼ」シリーズを提案し、東京でセレクトショップ「SHOP281」を経営。イタリア・ウンブリアと信州にも家を持ち、東京と信州、イタリアでの生活を楽しむ。 RECIPE BY YOKO ARIMOTO, TEXT BY MIKA KITAMURA