岡崎慎司が到達できなかった“一番いい選手”。それでも苦難乗り越え辿り着いた本質「今の選手たちってそこがない」
岡崎慎司が現役生活に幕を閉じた。世界中の猛者が集まるヨーロッパの地でサッカーをやり続けてきたからこそ、手に入れたもの、気づいたことがある。後輩たちへ伝えたいメッセージがある。岡崎が考える「一番いい選手」とは? 考えに考えて、数々の苦難を乗り越えてきた岡崎慎司の思考には本当に多くの学びがある。 (インタビュー・構成=中野吉之伴、写真=Panoramic/アフロ)
「そこまでのビジョンは僕にはない」。一番いい選手の頭の中
元日本代表FW岡崎慎司はブンデスリーガのシュツットガルトへの移籍を足掛かりに、欧州でさまざまな風景を見てきた。マインツではのちにドルトムント、チェルシー、バイエルンといった欧州トップクラブで監督を務めるトーマス・トゥヘルのもとでプレー。 そんなトゥヘルが「マインツにとって普通ではない選手の獲得だ。攻撃でも守備でもハードワークができる。まさにわれわれのサッカーにぴったりの選手。非常にフレキシブルで、オフェンシブなポジションならどこでもプレーできる。チームが目指している縦に速いサッカー、そしてボールに対するプレッシングスタイルに合っている。彼に多くのゴールを決められる状況をもたらせると確信している」とその獲得を喜んでいたことを思い出す。 マインツでは当初サイドハーフで出場していたが、センターフォワードとして起用されてからはゴールを量産し、2年連続2桁ゴールをマーク。2013-14シーズンの15ゴールはいまだに日本人選手5大リーグでの最多記録だ。 そんな岡崎が当時、「一番いい選手ってその時々の状況でプレーを変えられる選手だと思う」と話してくれたことがある。その後、イングランド・プレミアリーグのレスターを始め欧州各国でのプレーを経験し、今もそう思っているのかを尋ねてみた。5月半ば、引退の日を迎えるラストマッチを目前に控えていた時期だ。 「思いますね。特別な才能を持った選手になると、本当にギリギリで選択肢を変えたりすることができる。僕はパサーじゃないけど、そもそも本当にうまい選手って、ボールを受けるずっと前から『ここに走り込んでるな』『ここが空いてるから』みたいな感じで道筋を立てたりするわけじゃないですか。そこまでのビジョンは僕にはない。ただし、自分が上を目指せるなって思えているときは(イメージ通りに)体が動いて、そのボールを受けることはできた」