岡崎慎司が到達できなかった“一番いい選手”。それでも苦難乗り越え辿り着いた本質「今の選手たちってそこがない」
昨今の風潮とは異なる考え方。「俺が大事だと思ってるのは…」
岡崎をはじめ香川真司、本田圭佑、長友佑都、内田篤人、長谷部誠。みんなそれぞれのクラブで主力となり、CLに出場し続けた世代だ。彼らが持っていたぎらつき感、向上心、野心というものは果たして後天的に身につけられるものなのか。それとも持って生まれた割合が大きいのだろうか? 「両方あると思います。ただ、最初から持ってないとその先もないなとは思うんです。まずそれを持っているうえで、その先へ行くには、さらに持ち続けるっていう感じだと思うんです。これはプロになる選手だけの話ではなく、海外で上に行く、成功できる人って、どんな状況になってもそこの部分は持っている。どれだけ悔しくてもつらくても、それを抑えて乗り越えて頑張れる」 昨今の風潮として、がむしゃらな努力そのものをタブー視されがちだったりする。特に子どもたちに対して、「子どもが興味を持ったことだけ、きつくならない程度にほどほどにやらせたほうがいいよ。負荷をかけすぎると子どもがやる気を失ってしまうよ」と大人が大人の物差しで勝手に子どもの限界を決めて、「ほどほど」のなかで平穏に過ごすことがよしとなっていないだろうか。 「俺が大事だと思ってるのは……」 岡崎はそういって語気を強めた。 「何かがダメになったときとか、自分を否定されたときに、『今は我慢だ。でもこの我慢の時期を乗り越えたら、ここまで絶対いける!』って自分を信じられるかどうかということ。自分がそこから立ち上がるためにはそういうとこが大事になってくる」 やりすぎや不自然な理不尽は必要ない。暴力や暴言などもってのほか。それでも何もかもが準備されている温床からはたくましいパーソナリティは育まれない。トゥヘルがかつてこんなことを話していた。 「以前に育成指導者をしていた時、選手にとってベストの条件をつくり出すことが大事だと思っていた。だが今は、若手選手を可能な限り困難な状況におかなければならないと思っている。そうすることで確かな抵抗力を身につけることができる」