旗手怜央が掲げた新シーズンの目標「デ・ブライネやギュンドアンのような決定的な仕事ができる選手へ」
旗手怜央の欧州フットボール日記 第27回 連載一覧>> 2024-25シーズンがスタート。旗手怜央に昨シーズンの振り返りと新シーズンの目標を聞いた。ケガの多かった昨季は、自分のなかで気づくことが多かったという。 【動画】旗手怜央×林陵平対談 ポステコグルーとロジャーズの違い ◆ ◆ ◆ 【なるべくボールを蹴らない】 シーズンオフは、かつてのチームメートや日本代表で切磋琢磨する仲間たちに会い、貴重な時間を過ごした。それぞれ異なる土地や場所で頑張る戦友たちの言葉は、その一つひとつに学びがあり、刺激があった。 帰国中には、来る新シーズンに向けて、しっかりと自主トレも行なった。実はプロになってから、シーズンオフはなるべくボールを蹴らないトレーニングを実施している。 というのも、一年のうち単純計算でシーズン期間は10カ月あるとする。残りは2カ月――そのうち、キャンプなどの準備に1カ月を費やすと考えると、残る時間は1カ月になる。要するに、一年のうち11カ月もの間、サッカーボールを蹴っているのだから、たとえ1カ月間ボールを蹴らなくても、それほどボールフィーリングが鈍ることはないだろう。 むしろ、シーズン中は嫌でもボールを蹴るため、身体や走りをメインにしたトレーニングは、この期間にしか突き詰めることはできない。そのため、シーズンオフの自主トレでは、なるべくボールを使わずに、自分自身の身体に目を向けるようにしている。 同時に、この期間は昨季の自分をしっかりと見つめ直し、新シーズンへ向けた整理と、英気を養う時間にしている。
【ケガとの付き合い方で気づいたこと】 思い起こすと、昨季の自分はたびたびケガに苛まれ、思うようなプレーができなかった。 サッカー選手である以上、ケガは表裏一体で、言わばつきものでもある。特に昨季は、個人的にさまざまなことにトライしていた一年でもあっただけに、自分のなかで見えてくること、気づくことも多かった。 ひとつは、サッカー選手にとって、つきものと表現したケガとの付き合い方だ。 これまでケガを繰り返す機会はなかっただけに、復帰しては負傷し、復帰しては再び負傷するという負のサイクルを経験したのは初めてだった。 ケガをした直後は、患部の回復を優先して、リハビリすらできない期間もある。そうした時には、時間を持て余すだけに、ひとりで物思いに耽ったり、ネガティブな思考に陥りがちだったりする。 実際、僕もケガを繰り返した過程では、それなりに気持ちの浮き沈みがあった。そうした時、自分はその感情に素直に従うことで、自分の心と向き合った。 気持ちが沈んでいるからといって、無理に気持ちを上げようとか、高めようとは思わず、落ち込んでいるのであれば、落ち込んでいる自分の気持ちを受け入れる。自分の気持ちに素直になることで、自分を客観視し、心境を整理する時間にもなった。その結果、自分を奮い立たせるに契機にもなっていたように思う。 また、ケガをした直後は、未来が描きにくくなるからこそ、僕は具体的な目標設定をするように努めていた。たとえば、2度目に負傷した10月ならば、1月に行なわれるAFCアジアカップのメンバーに入るのを目標にしてみたり、3度目に負傷した冬であれば、シーズン終盤のタイトル争いで活躍することを目標にした。そして、その目標に近づき、クリアしていくことで、自信を取り戻していった。 その経験を踏まえ、何かに躓いたり、何かに悩んだりした時には、一度ありのままの感情を受け入れてみるのも手段や方法のひとつではないかと思う。自分の気持ちに蓋をして、無理に前向きになろうと抗うよりも、落ち込む時は落ち込むことで、逆に前向きな部分や改善点、はたまたきっかけを見つけられるからだ。また、日々を前向きに過ごすためにも、明確な目標を掲げて、そこに向かっていくのもプラスに作用するように思う。