希望者7割「短時間正社員」...だが、求人は数少なく 「働き方問題」解決の一手をどう広める?【専門家が解説】
複利厚生の制度から、有能な人材獲得の戦略的手段に
J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。 ――今回の調査結果をどう受けとめていますか。 川上敬太郎さん 短時間正社員で働いてみたい人が7割弱いるのに対し、実際に働いた経験がある人は1割強に留まる状況から、希望する人にとって実現は難しい、夢の働き方の1つと位置づけられるのかもしれないと感じました。 また、短時間正社員の求人の数や実際に働く人の事例が少ないことからも、現時点では、絵空事とまでは言わないまでも、現実味の薄い働き方と受け止められている印象を受けます。 ――それは残念ですね。しかし、さまざまな働く問題の解決法の1つとして短時間正社員が注目されているのはなぜですか。 川上敬太郎さん いまのところ、短時間正社員は福利厚生的な意味で設けられているケースが基本となっています。 育児介護休業法により、3歳未満のお子さんを育てている社員に関しては原則として1日の労働時間を6時間にする制度が設けられています。そうすることで、社員は育児と仕事を両立しやすくなり、職場側は定着率を上げることができます。 一方で、徐々に人事戦略の一環として短時間正社員を導入する職場も増えつつあります。業務さえ上手く設計できれば、1日8時間・週5日のフルタイムで働かなくても充分なパフォーマンスを発揮できるケースがあるからです。 すると、時間制約がある人材や副業したい人材なども戦力化しやすくなり、採用の間口が広がります。 ――なるほど。福利厚生面の施策だったものが、有能な人材獲得戦略へと広がっているわけですね。 川上敬太郎さん 短時間で正社員として活躍できる業務を切り出せるようになると、社員に任せるタスクの内容やいつまでにどのレベルで仕上げればよいかといった、求めたい成果が具体的になります。 すると、社員は自分の仕事のゴールをイメージできてコントロールしやすくなります。さらに、並行してDXも推進することで、自律的な業務マネジメントが必要とされるテレワーク環境を整えることにもつながっていきます。 ひいては、障害やご自身の病気などで柔軟な働き方を望む人も活躍しやすい職場となり、多様な人材を戦力化しやすくなることも期待できます。 さらに、短時間正社員を導入する職場では勤務時間の長さに応じて給与が決まるケースが多く見られます。 仮に1日8時間のフルタイム勤務で年収800万円を貰っていた人が1日5時間の短時間になれば、給与は800万円の8分の5の500万円です。年収800万円の実力がある人を500万円で雇うことができてコストメリットがあります。 ――企業にとっては、いいことづくめではないですか。 川上敬太郎さん 働き手にもメリットはありますよ。 短時間勤務だと高校時代のアルバイトと同じ仕事に戻ってしまうことが多々あり、社会に出てから培ってきたキャリアを継続できなくなりがち。ですが、経験やスキルが問われる短時間正社員であれば、キャリアを継続しやすくなります。 さらに、先ほどの例で示した給与が500万円といった水準であれば、100万円台で設定されているいわゆる「年収の壁」を超えても、働き損などが気にならないだけの収入を得られることになります。