ビール類の税率統一で、発泡酒と第3のビールはなくなるの?
2003年に発泡酒が増税されてから、発泡酒の売り上げは減少し、2014年にはピーク時の約3割にまで減った。増税翌年に業界団体が行った調査によると、24%の人が発泡酒を飲む量を減らしたり他の酒に切り替えたりしたという。これを考えると、価格を重視する消費者は、増税した場合に焼酎やチューハイなどの他の安価なお酒に流れると予測される。
「価格ではなく味で勝負すべき」
一方で、今回のビール類の酒税統一は、税収増を狙ったものではなく、複雑な税のルールで歪んだビール市場を適切な形に戻し、国際的な競争力のある商品を開発出来るようにするためとする意見もある。 元財務官僚で中央大学法務研究科の森信茂樹教授は、今回のビール類の税率統一が税収増が目的だという見方を否定する。「ビール類に3段階の税率があると、消費者は紛らわしい。メーカーも、安価な商品を好む消費者に合わせ、『第3のビール』など麦芽の味が落ちる商品を開発しなくてはならない。ビールの味ではなく価格で競争した結果としてビール類の味が落ち、ビール類が売れなくなって税収が落ちる。国・メーカー・消費者が三者とも損をした状態だ」 森信教授は、ビール業界も価格ではなく味で勝負すべきだと主張する。「私が財務省の酒税担当課長だった時代に、焼酎とウイスキーの税率格差の縮小を手がけた。結果、3倍に増税した焼酎が売れるようになった。ビール業界も、価格競争ではない別の形の企業努力で、ビール市場全体を大きくしていくべきだ」と語る。
増税で発泡酒・第3のビールはなくなるのか。各社に聞いた
今後ビール類の税率が統一されると、安さが売りの発泡酒・第3のビールはなくなってしまうのだろうか。ビール各社に、「ビール」と「発泡酒・第3のビール」のそれぞれの位置づけを聞いた。 まず、アサヒビールは、「ビールと発泡酒・第3のビールで特に分けて考えていません」と答えた。発泡酒や第3のビールに、ビールとは違う特別な価値がないとすれば、増税によって安さが魅力だった発泡酒や第3のビールはなくなるのだろうか。 一方、サッポロホールディングスは、「発泡酒・第3のビールは、ビールの価格の安い代用品という認識はございません。それ自体に独自の価値があると考えております」と答えた。「それ自体に独自の価値」とは何だろうか。その疑問に答たのが、キリンとサントリーだ。 キリンは「発泡酒、第3のビールは、価格だけではなく『機能性』を求めて愛飲するお客様も多くいます」と答える。「機能性」とは糖質オフ・プリン体オフ・カロリーオフといった、ビールにはない特徴のことだ。同社は「健康志向が高まる中で、機能性のニーズは今後も高いと考えており、これからも顧客ニーズを獲得できるよう尽力していきます」と答えた。