企画の鬼、CCC増田会長の「鬼秘録」|増田宗昭×小山薫堂スペシャル対談(前編)
「何をやるか」ではなくて、概念的に「自由を実現すること」
小山:データというのは、どう使うことが一番正しいと思いますか。 増田:それは薫堂が言ったように、心だよ。心がないデータに意味はない。例えば、今日雨が降って、明日は降らないで、明後日に晴れるというデータを心で使うとする。「嫁はんに無駄な洗濯をさせたくない」という思いが先にあって、だから天気を知りたいわけね。「明日晴れるから、今夜洗濯したらいいよ」という、その思いがあってこそ、データが生きる。 小山:すごいなあ。増田さん、いま73歳ですよね。「人生100年時代」だとして、失礼ですが、あと27年。その間に絶対にやりとげたいことってありますか。 増田:独立した時からたくさんあるし、いまも思いついた企画をスマホで管理しているけど、3741件あるよ。 小山:そんなに!? そのなかで一番叶いそうもないことは何ですか。 増田:ない。だってぜんぶ実現するから。いまは実現の方法が見えてないだけでさ。そこを妥協するくらいなら、人生やめたほうがいいと思うな。やりたいことがあるのに妥協して「これでいいや」なんて、生きるのもったいないじゃん。 だから、やるって決めたら絶対やる。とことんやる。 小山:脱帽です。では、逆に一番やり遂げたいことは何ですか? 増田:弊社の社是の一番大事なことは、「何をやるか」ではなくて、概念的に「自由を実現すること」なの。5W1Hに自由をプラスしたような生活。好きなときに、好きな場所で、好きな人と、好きなことを、好きな理由で、好きなようにやる。それが一番。第一、薫堂もそうやんか。 ■今月の一皿 「増田氏は厚切りハムが好き」というデータをもとに料理人ゴローがつくった長崎・雲仙ハムの厚切りステーキ。 ■blank 都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。 増田宗昭◎1951年、大阪府生まれ。同志社大学卒業。83年に「蔦屋書店」を創業。85年、カルチュア・コンビニエンス・クラブを設立し、TSUTAYAの全国展開で事業を拡大。カルチュア・インフラを創り出す企画会社のトップとして現在も精力的に活動中。 小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。
小山 薫堂