“省エネ受験”でお金も時間もほどほどに 個性尊重の方針など学校選びの基準にも変化
子どもが中学受験をするとなると、かけもちで塾に通い親は送り迎えに奔走するイメージもある。しかし近年は負担の少ない受験対策や、偏差値上位にこだわらない学校選びなどの変化が目立ち始めた。AERA 2024年12月9日号より。 【図表を見る】首都圏の私立中学・志願者数増加トップ5はこちら * * * IT系企業で働く都内の40代の女性の息子は、「新タイプ入試」と呼ばれる思考力入試に絞って受験をする道を選んだ。 小学校入学当初、女性は外資系企業に勤務。コロナ禍では息子が自宅学習する中、在宅勤務を余儀なくされた。一緒にいるのに仕事ばかりで構ってあげられない中、ある日、息子はついにキレた。社名と共に「死ね!」と大きな字で書いた紙をオンライン会議中の女性に向かってかざしたのだ。 以来、女性は働き方を考えるようになり息子が小学4年生の冬、海外とのやり取りがない今の会社に転職した。暮らす地域は中学受験をする子が多いが、息子はそれほど勉強に熱が入る様子もなく、中学は公立でいいと思っていた。だが、高学年に入ると気持ちが変わった。「ある頃から息子は理由の分からないことを無理矢理やらされることに反発心を抱くようになりました」 学芸会の役決めでは「なぜ、全員が何かの役をやらなくてはいけないのですか!?」と担任に意見したという。画一的な指導をする公立ではなく、個性を大事に育ててくれる学校に入学するほうが本人も幸せかもしれないと思うようになった。 ■通塾時間を削って臨む しかし、受験までの時間は1年しかない。情報を集めるうちに知ったのが「新タイプ入試」だった。大学の総合型選抜入試のようなもので、プレゼンテーションや作文、面接などで合否が決まる。新タイプ入試に向けた指導を行う少人数制の塾を見つけてお願いしつつ、自宅でも対策を開始。『こどもロジカル思考』(カンゼン)など、思考力が鍛えられる本を親子で読んで話し合う時間を持った。6年生の夏休みには個別指導も追加し、めでたく志望校合格を果たした。トータルでかかった費用は150万円ほどだった。 「思考力入試の準備は息子とのよいコミュニケーションの機会になりました。王道の小学3年の2月からの入塾だと小学校生活の半分は通塾することになりますし、費用もおそらく倍以上だったと思います」