米大統領選でも暗躍! 生成AI導入で急増する「偽装ニュースサイト」の闇
■日本にも侵入する偽装サイト では日本は、こうした米大統領選挙を巡るピンクスライムの増殖を「対岸の火事」と考えていていいのだろうか。 「日本にも、AIによるフェイクサイトの脅威がもたらされています。それは外国勢力による『影響工作』の一環とみられる動きです」 平氏によると、すでに実例が出ているという。 「23年8月にハワイ・オアフ島で発生した大規模な山火事について、『米国の気象兵器によるもの』とする陰謀論が各言語で拡散されました。中国発の影響工作ネットワーク『スパモフラージュ』によるものとみられています。 このとき、日本のブログサイトでも、日本語やラテン語などで同じ内容の文面が投稿されていました。AIによる自動翻訳のようでした。 ただ、AIによる記事の生成、翻訳は人間レベルに近づいていることから、これまでは『日本語のおかしさ』などから判断できたフェイクニュースも、なかなか見分けがつきにくくなっています。 また、カナダのトロント大学の調査では『ペーパーウオール』と呼ばれる、やはり中国発とみられるネットワークが、『銀座新聞』『福岡新聞』など、日本のメディアを偽装するサイトを開設したことも確認されています。 外国勢力がAIを使って日本のメディアを偽装したサイトをつくり、国内の情報を操作する可能性が現実味を帯びています」 平氏は、偽装サイトがSNSなどで拡散されれば、世論操作につながる危険性もあると指摘する。どのような対応が求められるだろうか。 「偽情報・誤情報などのフェイクニュースや詐欺広告が氾濫している現状を見ても、SNSなどのプラットフォーム企業が、違法・有害コンテンツに十分な対策を取れていないことは明らかです。各社の利用規約に反するコンテンツについては、しっかり対応することが求められます。 また、SNSの利用者のリテラシー向上も急務です。フェイクニュースを共有すれば、その拡散に加担することになります。それが他人の権利を侵害する内容なら、法的責任を問われる可能性もあります。情報を扱うということのリスクを認識すべきでしょう」 急激に進化するAIが悪用され、インターネット上の"情報汚染"は加速している。偽情報・誤情報やフェイクニュースに踊らされないよう、注意を怠ってはならない。 ●平 和博(たいら・かずひろ)桜美林大学リベラルアーツ学群教授(メディア・ジャーナリズム)。早稲田大学卒業後、朝日新聞入社。社会部、シリコンバレー駐在、科学グループデスク、編集委員、IT専門記者(デジタルウオッチャー)を担当。2019年4月から現職。著書に『悪のAI論 あなたはここまで支配されている』(朝日新書)、『チャットGPT vs. 人類』(文春新書)など 取材・文/植村祐介 イラスト/ぱいせん