米大統領選でも暗躍! 生成AI導入で急増する「偽装ニュースサイト」の闇
■AIライターによるネットワークの急拡大 「ピンクスライムが大きな注目を集めたのは、20年の大統領選挙の前年、19年でした。保守派の資金をバックに、保守的な主張を伝えるメディアネットワークとして急拡大しました。 いずれもローカル紙のウェブ版を偽装した体裁で、メディア名に地域名を取り込んでいることなどが特徴でした。ピンクスライムの実態を報じてきた『コロンビア・ジャーナリズム・レビュー』誌によると、19年には450件程度だったのが、大統領選挙の20年には1200件ほどに拡大していました」 閲覧者の多くは、こうしたピンクスライムを自分の住む地域のウェブ版ローカル紙と誤認し、その政治的主張を受け取ったことになる。 「このときもすでにAIによる記事の自動作成が導入されていたようです。ピンクスライムの制作は、低賃金のライターからAIに置き換わっていったのです」 そして今年、大統領選挙を11月に控え、ピンクスライムの数は、ローカル紙の廃刊とは対照的に急増しているという。 「サイト評価会社『ニュースガード』によると、全米のピンクスライムは約1200で、現存するローカル紙のサイト数とほぼ同数です。 その運営の中心人物とされるのが前述のティンポーン氏です。同氏を中心に複雑につながったピンクスライムのネットワークは、全米各地に広がり続けています。 こうした保守派のピンクスライムへの対抗策として、リベラル派も同様のメディアネットワークを立ち上げています。大統領選挙本番に向け、両陣営の情報戦はさらに過熱していくでしょうね」 ピンクスライムのような、自動化された低品質の偽装ニュースサイトは、米国以外でも確認されているという。 「『ニュースガード』の調査では、AIで生成されたとみられる低品質サイトは、16言語、840件に上るといいます。記事の一部に『AI言語モデルとして、このプロンプト(記事作成の指示)を完了できません』といった、生成AI特有のエラーメッセージがそのまま転載されていることなどが、AI生成記事発見の手掛かりになります。 AIに『どういう内容の記事を何文字くらいで』と指示を出し、以降は自動で記事がアップロードされるような仕組みのため、そうしたエラーメッセージもそのまま掲載されてしまうようです」