米大統領選でも暗躍! 生成AI導入で急増する「偽装ニュースサイト」の闇
■政治色の強いピンクスライム ピンクスライムとは、そもそも「牛肉を切り分ける際に出るくず肉を加工、殺菌して作られる食肉の増量剤」のことだった。しかし、現在では「政治的主張をPRするため、地域の新聞であるローカル紙を偽装したサイト」として知られているという。 「アメリカでは4年に1度の大統領選挙に向け、さまざまな政治的主張が交わされます。21世紀の情報伝達手段の主役となったインターネットは、大統領選挙に向けた主張の場として欠かせないものとなっています。 そして、信頼できるローカルニュースのように見せかけて、自陣に有利な主張を広めるピンクスライムがはびこるようになったわけです」 ピンクスライムはなぜローカル紙を偽装するのか? 「アメリカでは、日本の五大紙のような全国を網羅する新聞のシェアはそれほど大きくありません。逆に地域のローカル紙が人々の情報源で、高い信頼を集めてきた歴史があります。 アメリカには州が50ありますが、その州の下に約3100の『郡』があり、これが『市』と共に、地域の行政を担っています。そうした郡や市などのレベルで、ローカル紙が地域の情報を提供する重要な役割を担っているのです。 ところがインターネットが情報伝達の主役になって以降、ローカル紙は部数減による経営難に陥り、廃刊が相次ぎました。現在ではすでに200ほどの郡が"ニュース砂漠"と呼ばれるローカル紙消滅地域です。 そこに入れ替わるように浸透したのが、"ネット版のローカル紙"に見せかけたピンクスライムです。ローカル紙のような体裁で、地域住民が持つ信頼性にただ乗りしているんです」 ピンクスライムという呼び名が登場したのは、2012年だったという。 「ブライアン・ティンポーン氏という保守派の実業家が運営していたメディア企業が、フィリピンや東欧などのライターに低賃金で記事を外注し、ローカル紙に配信していたのですが、署名の偽造や記事盗用が発覚しました。 そのライターのひとりが『自分の仕事は、肉を増量するピンクスライムのようなもの』と表現したことがきっかけです」