〈モノつくりがリスペクトされる社会を〉世界が注目する映像クリエイターが生み出す次世代のための「場」
「東京五輪2020」のピクトグラムで競技者の体の動かし方を表現し、エアバイクを漕ぎながら漢字の成り立ちを楽しむことができる動画「Kanji City」では、世界から称賛されました。 【画像】〈モノつくりがリスペクトされる社会を〉世界が注目する映像クリエイターが生み出す次世代のための「場」 そして、2022年に拠点をニューヨークに移してからは、マンハッタンのタイムズスクエアで「NIKE」や「Google」、「BMW」の立体映像として飛び出す動画広告を制作するなど、世界を代表する映像クリエイターとして注目される「CEKAI(セカイ)」を率いる井口皓太さん(39歳)と、プロデューサーの三上太朗さん(39歳)に「今、日本人に伝えたいこと」を聞きました。 井口さんは武蔵野美術大学在学中の08年、デザインチームTYMOTE(ティモテ)を創業します。 「当時、学生起業は今ほど一般的ではありませんでした。でも、大手広告代理店に入るのがステータスという常識に疑問を持っていました。いつか、自分たちみたいな野良集団でも、東京五輪のデザインを勝ち取れたら面白いだろうなと話していました」(井口氏) 三上さんは同じ時期、東京五輪招致チームの仕事に携わっていました。私も「場づくり」「地域おこし」「店舗開発」などでプロデューサーをしています。三上さんにとってプロデューサーとはどのような仕事なのでしょうか? 「仕事の受注や制作の進行管理に加えて、クライアントとクリエイターの想いをつなげる翻訳作業です」(三上氏) この「翻訳作業」こそがプロデューサーにとって重要だと私も思います。クライアントが求めること、クリエイターが表現したいこと、この間のつなぎ役になるのです。双方とも考え方はもちろん、使用言語の使い方も異なるため、まるで翻訳作業をしているようになるのです。三上さんは「いま、仕事の8~9割は、直クライアントです。もちろん、代理店経由が悪いというわけではありません」と言います。 「『渋谷をジャックする』など、仕事をスケールさせる場合、代理店と一緒にやった方がよい面もあります。それに対して、直クライアントの場合、『顔が見える関係』になれます。それぞれ違う世界観がある中で、クライアントとクリエイター、どちらが正しいのかといった問題に直面した時には、フェイス・トゥ・フェイスのほうがコミュニケーションはスムーズです」(井口氏) 井口さんは、東京五輪のピクトグラムを制作する前、拠点を京都に移しました。その際「東京はノイズが多い」と話されていたことをよく覚えています。でも、ニューヨークは、東京よりもっとノイズが多いように思えます。 「京都に拠点を移す前に、ニューヨークに来たことがあって、ブルックリンからマンハッタンの高層ビル群を眺めると、『東京よりも山が高いな』って思ったんです。京都に移ったのは、東京から意識的にチャンネルを変えようと思ったことと、アメリカやグローバルで仕事をするには、もっと日本のことを知る必要があると考えたからです」(同) 京都時代の井口さんは、時間をかけて作品を手がけるようになったと言います。その時の作品が冒頭の「Kanji City」をはじめ、「ミツカン ミュージアム」「ミラノ万博の日本館」「彦根城のプロモーション」などです。より文化的な作品を制作することで、世界からの注目も集まるようになりました。