名スカウトが選ぶ本当にドラフトで指名すべき7人
片岡氏が「番外編」で一押しするのが、そのプロ志望合同練習会に参加した国学院栃木のシャピロ・マシュー・一郎だ。191センチの長身。成長痛に悩み公式戦には、わずか3試合しか投げておらず、その実力は今なお、ベールに包まれているが、東京ドームでの“高校生トライアウト“で才能の一端を垣間見せた。 「ほとんど試合に投げていないからまったく未知数だが、全身がバネという素晴らしい素材。数打てば当たるではないが、こういう選手を、ぜひどこかで抑えておきたい。大袈裟ではなく素材としては、ロッテへ行った佐々木朗希より上だと思う。うまく育成ができれば将来メジャーで通用するような投手になる」 一方、野手では、大学生2人の名前が挙がった。オリックスが早々と1位指名を公表。巨人、阪神も狙いをつけている話題の近大の佐藤輝明三塁手、中央大の五十幡亮汰外野手だ。 佐藤は“柳田二世“とも”糸井二世”とも呼ばれる3拍子が揃ったスラッガー。187センチ、94キロの体格にかかわらず、50メートルを5秒台で走る走力があることも特徴。また五十幡も中学時代に東京五輪の代表候補、サニブラウンに勝ったという逸話を持つ快足が自慢だ。 「近大の佐藤は、逆方向に打てるバッティングと足が魅力。こういう選手は現場が使いやすい。彼の映像を見ていると、まるで金属バットを使っているのかと錯覚を覚える。それほど打球が飛び、インパクトが強い。逆の見方をすれば、バットのしなりを使えず、いわゆる”間”という部分が欠けているようにも感じる。柳田クラスではないだろうが、日本人の主軸を求めるチームが欲しがるのは理解できる。 中央大の五十幡のように足のある一芸選手には魅力がある。ソフトバンクの周東やロッテの和田のようにピンチランナーだけで生きていける。バッティングも力負けしていないし、プロの水に慣れてくれば、そこそこ結果は残せるだろう」
野手では、即戦力の上位候補としてJFE東日本の今川優馬外野手、中央大の牧秀悟塁手、東北福祉大の元山飛優遊撃手らの名前がリストアップされているが、片岡氏は、「内野手は、まず鍛えられている守備力。その点で言えば元山。スカウトは短所より長所を見るべきだが、今川、牧はプロでやるには粗が目立つ」という評価。 高校生では、ロッテの安田憲尚、阪神の井上広大ら履正社のスラッガーの”血筋”を引く左打者の小深田大地三塁手、甲子園で逆転満塁本塁打を放った中京の元謙太らにプロが注目しているが、片岡氏が「将来、出てくる」と見ているのは、中森とのコンビで2年生の頃から甲子園を沸かせた明石商の来田涼斗外野手だ。 「小深田は、安田、井上に比べると素材として物足りなさはあるが、ファームで鍛えたい素材。中京の元も投手をするほどのポテンシャルは面白い。スピード、センスを感じるのは来田だ」 片岡氏は、最後に2020年のドラフト展望をこうまとめた。 「この選手さえ抑えておけば間違いないという候補のいないドラフトだと思う。それだけ各球団のスカウト力が左右するドラフトになるだろう」 リモートで行われる新型コロナ禍の異例のドラフト会議。そこにはどんなドラマが待っているのだろうか。