【高校ラグビー】花園へ強豪同士が激突!ライバル対決を制したのは京都工学院&国学院久我山 東福岡は力強さをみせ25大会連続の聖地へ
年末年始に花園ラグビー場で行われる全国高校ラグビー大会。続々と代表校が決まる中、聖地を目指す戦いも、より激しさを増しています。11月9日(土)、10日(日)には、全国でも注目の強豪校が登場。それぞれライバル対決となる決勝戦が行われました。
【京都大会】赤黒ジャージの京都工学院「信は力なり」が復活
10日(日)に行われた京都大会決勝は、「ピラニアタックル」の名のもとその固いディフェンスで、常に全国上位の実力をキープしてきた京都成章と、「信は力なり」の言葉とともに、花園に数々の伝説を残してきた伏見工の流れをくむ京都工学院。強豪京都の高校ラグビー界をけん引してきた両校による10大会連続のライバル対決となりました。 キックオフ直前、入場を待つ観客が長蛇の列をなすほどの注目を集めたこの試合、序盤から両チームの闘志がぶつかり合う激しい展開となります。京都成章が、力強い縦突進を中心にボールを継続しながら激しく体をあてて前進を試みると、京都工学院は、集中したディフェンスとBK陣の距離の出るキックで対応。開始から10分近く、一進一退の攻防が続きます。 そんな中、試合を動かしたのは京都工学院のスクラムでした。PR春名倖志郎選手が、「最初のスクラムは緊張したが、2本目のスクラムからは、自分たちのスクラムに責任感をもって押すことができた」と振り返ったように、マイボールのスクラムをしっかりコントロールすると、成章ボールのスクラムには、FW陣が一体となってプレッシャーをかけていきます。そして開始9分、成章陣内25m付近からの成章ボールのスクラムを一気に押し込むと、たまらずボールをリリースした成章からペナルティーを誘発。このチャンスに、SH片岡湊志選手が約25mのPGをきめて、まずは、京都工学院が3点をリードしました。 主導権を握りながらも、先制点を許した京都成章、この後あせらず反撃します。チームを率いる関崎大輔監督が、「キャプテンの田中聖大選手を中心に春から大きく成長してくれた」というように、この1年間築き上げてきた素早い集散から縦への強い意識をみせる攻撃で何度も、何度も京都工学院陣内22メートルラインの内側まで攻め込みます。 しかし、京都工学院の粘り強いディフェンスの前にあと一歩のところで得点に結びつけることができません。19分には、京都工学院のゴールライン目前まで攻め込みますが、またしてもスクラムをコントロールされてペナルティー。前半は、数多くのチャンスをつくりながらも無得点。京都工学院の3点リードで折り返します。 それでもサイドの変わった後半、風上にまわった京都成章がさっそくチャンスを生かします。後半2分、ペナルティーキック1本で、自陣から敵陣深くまで攻め込むと、ラインアウトからの素早い仕掛けで京都工学院のペナルティーにつなげます。そしてFB笹岡空翔選手が中央からのPGに成功、3対3の同点に追いつきました。 ここからは、両チームの勝利への執念が激突。お互いが持ち味を発揮しながら、接点で激しく体をぶつけあう緊迫した攻防が続きます。ミスが許されない緊張感の中、時間はあっという間に過ぎていきます。そして後半17分、試合がついに動きます。京都工学院は、京都成章が犯した一瞬のミスをついて、ペナルティーで敵陣深くまで攻め込むと、終始安定していたスクラムから待望の初トライにつなげます。スクラムから一度右をついた後、逆サイドに展開して、キャプテンのFB広川陽翔選手が、うまくディフェンスのギャップをついて左中間にトライ。「ここで決めないとキャプテンでないと思ったので、自分で行こうと覚悟を決めていった」と語った高校日本代表候補にも選出されている広川選手、一旦右サイドを突いた後の攻撃で、FW選手がカバーに入っていた逆サイドのディフェンスのミスマッチを見逃しませんでした。 さらにプレッシャーのかかるコンバージョンゴールをSO杉山祐太朗選手が、見事に決めて10対3、残り時間10分余りで京都工学院が7点のリードを奪いました。それでも、さすがは、10大会連続で全国高校ラグビー大会の出場権を手にしている京都成章、去年の京都決勝でもラスト5分で逆転したように、ここからひるまず反撃します。京都工学院の鋭いタックルを受けながらも、懸命にボールをつないで攻め続けます。 そして24分、京都工学院ゴールラインまで5メートルまで攻め込むと、ラインアウトからのモールを、うまくポイントをずらした後、一気に押し込んでトライ。FW陣の1年間の努力を感じさせるトライで10対8と2点差に迫りました。しかし、右スミからのコンバージョンキックは、惜しくも外れてゴールならず、2点差のまま試合は、残り時間およそ5分の攻防に突入します。 刻々と時間が少なくなる中、自陣の深い位置からでもボールをつないで必死の反撃を試みる京都成章、一方、全員がまさに体を張った集中力の高いディフェンスで大きなゲインを許さない京都工学院。両サイドに分かれて声援を送る両校の応援団のヴォルテージも最高潮に盛り上がる中、息詰まる攻防が続きます。それでも京都工学院の大島淳史監督が「成章さんの魂がこもった試合、最後は、理屈じゃない戦い。恩師の山口良治先生から教えていただいた心、(伏見工のジャージである)赤黒のプライドを取り戻すという気持ちで生徒たちが頑張ってくれた。やってくれると信じてみていた」と語ったように、京都工学院の伏見工から受け継がれた魂が上回りました。 最後は、ハーフウエイライン付近まで、エリアを戻していた京都成章の猛攻を京都工学院のボールへの執念が上回って、ついにノーサイド。最後まで死力を尽くした戦いに、両チームへの会場からの惜しみない拍手が鳴りやみませんでした。 京都工学院が10対8と2点差の激闘を制して、9大会ぶり21回目、京都工学院となってからは初めての全国高校ラグビー大会への出場を決めました。花園へ久しぶりに「信は力なり」の言葉を刻んだ、赤黒のジャージが戻ってきます。