春日部共栄、力及ばず 逆転信じスタンド一丸 /埼玉
<第91回センバツ> 第91回選抜高校野球大会第1日の23日、県勢の春日部共栄は初戦で高松商(香川)と対戦した。エースの村田賢一投手(3年)は三回に1点、五回に2点を失うと、六回には守備も乱れて4失点。打線も高松商の左腕・香川卓摩投手(同)のテンポのいいピッチングの前に4安打13三振と抑えられ、反撃ムードを作れないまま0-8で完封負けした。【畠山嵩、金子昇太】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ▽1回戦第2試合 春日部共栄 000000000=0 高松商 00102410×=8 「ゲッツーだ!」。三回裏、1点を先制され、なおも1死一、二塁のピンチで村田投手が相手打者を併殺打に打ち取ると、春日部共栄の三塁側スタンドは歓声に包まれた。四回表には4番の村田投手が中前打を放ち、応援は一気に熱を帯びた。村田投手の父・長巳(おさみ)さん(48)は「いつも通り投げていて、ほっとしている。一本出たのでみんなでつないでくれれば」と祈った。 五回に2点を追加され、六回にはさらに高松商打線が猛攻を見せる。村田投手の投球フォームが乱れたのを見逃さず打ち崩すと、暴投も呼び込み、一挙4点を奪った。選手たちを力づけようと、センバツに向けて練習を重ねてきた吹奏楽部コンサートマスターの星野高輝さん(3年)は「一生立つことのできない場所に連れてきてもらった。逆転を信じて自分たちの音楽で鼓舞し続ける」と指揮を続けた。 7点を追う七回表。5番・石崎聖太郎主将(同)から始まる好打順だが、高松商の香川投手に3者凡退に抑えられた。石崎主将の母・亜希子さん(43)は「リーダーをする子ではなかったので主将と聞いて不安だった。甲子園までチームを引っ張り成長を実感した。悔いの残らないプレーをしてほしい」と力を込めた。 さらに1点を奪われ8点差となった最終回。先頭の2番・木村大悟選手(同)が中前打で出塁し意地を見せたが、相手内野手の好プレーもあり、後が続かず試合終了。応援団長の本田敬也(たかなり)さん(同)は「夢の舞台に連れてきてくれただけでも素晴らしいこと。今後もサポートするし、頑張ってほしい」と夏の甲子園を見据えた。 ◇麦わら帽子をPR ○…春日部共栄のアルプス席では、生徒らが地元・春日部市名産の麦わら帽子をかぶって応援した=写真。同市は明治時代から麦わら帽子の製造が盛んになり、戦後は約30軒の製造業者が並んだが、化学繊維の普及で衰退し現在は1880(明治13)年創業の「田中帽子店」1社のみ。春日部共栄が甲子園に出場する際には毎回、各社が手分けして帽子を納入してきたが、今回は1社で手がけた。全工程手作りの帽子3000個を2カ月で作り上げたという。6代目の田中優さん(28)は「春日部は麦わら帽子の街とPRできる。甲子園のスタンドにも映えます」。 ……………………………………………………………………………………………………… ■白球譜 ◇大舞台、ほろ苦デビュー 平尾柊翔(しゅうと)選手(2年) 「楽しんでこい。自分らしく頑張れ」。甲子園入りした16日、3歳の頃から野球を教えてくれた叔父に電話で励まされた。だが、大歓声で包まれた「甲子園の雰囲気にやられ」、本来の力は全く出せなかった。初の甲子園は、ほろ苦いデビューとなった。 中学時代は15歳以下の日本代表に選ばれた逸材。昨秋の公式戦打率はレギュラートップの4割2分を誇り、主軸の3番を任されている。 自信を持って臨んだ今回のセンバツ。1打席目は三振、2打席目もスライダーを2球空振りし、最後は見逃し三振を喫した。「狙い球を絞れず、何を打てばいいか分からなくなった。初めての経験だった」。3打席目も三振に倒れ、九回の打席は榊原圭哉選手(3年)が代打で出場した。「自分よりも榊原さんのほうが可能性はあったけど、悔しかった」と唇をかむ。 積極的にバットを振れなかったことや狙い球を絞りきれなかったことなど、課題は既に見えている。春は鳴らせなかった快音を夏の甲子園で響かせるつもりだ。【畠山嵩】