自公の過半数割れで市場は「トリプル安」に陥る?
衆院選で自民党と公明党の与党が過半数割れしたことで、市場には不透明感が増しています。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。
国内政治要因でトリプル安を説明するのは無理がある
衆院選の結果は多くの投資家が予想していたよりも与党系が苦戦しました。自民・公明党の過半数(233議席)割れは事前に予想されていたものの、結果は215議席の獲得に留まり、石破首相の進退が焦点となる事態に発展しています。非公認議員の取り込みに成功してもなお自公が過半数割れとなった場合、連立への合流が一部で取り沙汰されている国民民主党については、29日夕方時点の情報に基づくと玉木代表は「連立政権入りはない。交渉には応じない。政策本位で進めていく」と明言。また日本維新の会の馬場代表は「今の与党に協力する気は全くない」として、両党とも連立の合流に否定的な構えを示しており、政策不透明感が強まっています。 本邦金融市場では、自公の過半数割れが意識され始めた頃からトリプル安(株安、円安、債券安=金利上昇)の様相を呈していました。政権基盤の弱体化によって政策遂行能力が低下することを懸念した投資家が相当数存在したことは事実でしょう。 とはいえ、国内政治要因でトリプル安を説明するには無理があります。まず、金利と為替については米長期金利の動向がより重要です。FRB(連邦準備制度理事会)が0.5%ポイントの利下げに踏み切った9月18日のFOMC(連邦公開市場委員会)以降、雇用統計や小売売上高など米経済指標が力強さを取り戻す中、FRBの利下げ観測は後退し、FF金利先物が織り込む年内の利下げ幅は縮小傾向にありました。 また2025年12月FOMCにおける政策金利の予想は現在3.5%程度で、これは9月FOMC直後の2.9%程度から大幅に切り上がっています。こうした中で、円金利上昇を伴って日米の長期金利差が拡大し、ドル高・ 円安が進むのはある意味自然です。衆院選後の28日にUSD/JPYは153円を一時突破したものの、これが「日本売り」を意味しているかと言えば、現時点で筆者は懐疑的にみています。