応募倍率10倍の運送会社が貫く「マメな発信」 若者を引き付けた働き方改革とイメージ戦略
物流業はドライバーの長時間労働規制に伴う輸送力不足が懸念され、「2024年問題」に直面しています。そんななか、カワキタエクスプレス(三重県亀山市)の創業社長・川北辰実さん(60)は「うちの2024年問題は解決した」と言い切ります。IT化による業務効率化、歩合制から月給制への切り替えによる労働時間抑制、TikTokやYouTube、Podcastによる発信強化を実行。人材は全国から集まり、競争倍率10倍を誇ります。10~20代の社員が7割を占め、一時65%にも上った離職率も5%に下がりました。 【写真特集】人手不足に負けない 中小企業の人材採用の工夫
いち早いIT化で経産省から表彰
カワキタエクスプレスは1989年に創業し、段ボールや印刷物などを運ぶ一般輸送、引っ越しが主業務です。全国のイベントや展示会などへの輸送業務も手がけています。大型トラックなど約25台を保有し、正社員数は34人です。 川北さんは高校卒業後、県内外の職場を経て地元亀山市に戻りました。「結婚もしていましたが、やりたい仕事もなくアルバイトを転々としました。その一つが宅配便配達です。3カ月ほど働くと『宅配の請負業者をやらないか』と声をかけられ、独立しました」 業界では、荷物の持ち出しや配達などの記録が残る追跡システムが出始めていました。もともとエクセルを操作することが好きだった川北さんは、早い段階から外部企業と連携してIT化を進め、同様の追跡システムを開発したり、エクセルで請求書をスムーズに出せる仕組みを作ったりしました。 2002年にはシステム会社に依頼して独自の業務システムを開発。受注入力や請求書支払い、配車処理と連携させ、顧客や協力会社への報告などを一度に管理できるようにしました。 「たとえば1号車と2号車の仕事を入れ替える際、打ち直しせずマウスで入れ替えるだけで配車できるようにしました。請求書なども自動で出るように連携させ、事務作業が軽減しました」 その後、車両の運転状況を記録するデジタルタコグラフやドライブレコーダーを搭載。トラックの運行状況をGPSで管理し、オフィス内の画面に地図を映し出し、運行や勤怠の状況を一覧で確認しています。 いち早いIT化が評価され、2008年、経済産業省の「中小企業IT経営力大賞」で審査委員会奨励賞を受賞しました。年商は年々上がり、2007年末には本社を移転し倉庫や社屋を拡大。2008年には4億円を上回るようになりました。