2025年「フィリピン経済予測」…成長を阻む複数要因、政府目標「6~8%成長」は厳しいか?
供給の不安定化でインフレ懸念高まる
国際通貨基金(IMF)によると、フィリピンのインフレーションは近年、燃料や食料の輸入依存度の高さ、気候変動による悪影響のため、需要要因よりも供給要因の影響を強く受けているとしています。 IMFは、気候変動や地政学的な分断の進行によって、供給ショックの「頻度、深刻さ、持続性」が今後さらに高まる可能性があるとしています。フィリピンは16年連続で「世界で最もリスクの高い国」と評価されており、毎年複数の台風や極端な気象現象に見舞われ、農業やインフラに数十億ペソ規模の被害が発生しています。 フィリピン中央銀行(BSP)は、こうしたショックが物価に与える影響を慎重に見極め、インフレ懸念が固定化されないよう注意を払う必要があるとしています。2022年以降、世界的な商品価格の上昇やサプライチェーンの混乱により、フィリピンのインフレ率は高水準に達しており、2022年は平均5.8%、2023年は6%でした。 フィリピンペソは2024年にドルに対して59ペソまで下落する場面が3回あり、BSPは市場秩序を保つために一部介入していると述べています。ただしIMFは、市場介入は一時的な手段にすべきであり、必要なマクロ経済政策の調整の代替策として使用すべきではない、と警告しています。 2024年10月以降、BSPは主要銀行や準銀行に対する準備預金比率(RRR)を9.5%から7%に引き下げました。IMFはこの動きについて、金融仲介コストの低減や地域の平均水準との整合性を高める効果が期待できると評価しています。ただし、このようなRRRの変更は、金融政策全体のスタンスに組み込まれるべきだとしています。 また、フィリピンの資本市場の発展に向けた努力も注目されています。BSPは最近、金利スワップ(IRS)市場を再活性化し、基準となる利回り曲線の整備を進めています。これにより、企業や銀行がローカル金利リスクをヘッジしやすくなり、固定所得およびマネーマーケットの発展が期待されています。
家村 均