2025年「フィリピン経済予測」…成長を阻む複数要因、政府目標「6~8%成長」は厳しいか?
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は2025年のフィリピン経済、金融の動向について解説していきます。 【動画】日本のシン富裕層✖︎永住権・移住
2025経済成長予測、政府目標下回る理由
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の予測によると、フィリピンの2025年の経済成長率は5.9%にとどまり、政府が設定した6~8%の成長目標をわずかに下回る見通しです。国内需要は緩やかに回復するものの、貿易赤字の拡大が成長の制約になるとしています。 フィリピン経済は2024年第三四半期に5.2%成長を記録するも、予想を下回る結果となりました。この結果は過去5四半期で最も低い成長率であり、2024年1~9月の平均成長率も前年の6%から5.8%に減速しました。政府は国内外の不確実性を反映し、成長目標を修正しています。 今後1年間で民間消費と投資が緩やかに回復する一方で、政府支出の伸びは鈍化すると予想されています。2024年第三四半期の政府支出の伸びは5%で、前四半期の11.9%から大幅に減少しました。さらに、2024年10月の貿易赤字は58億ドルに拡大し、2年以上ぶりの高水準に達しています。これらが経済成長のさらなる制約要因となる可能性があります。 BofAは、2025年のインフレ率を平均3%と予測し、中央銀行(BSP)の目標レンジ(2~4%)内に収まると見ています。ただし、フィリピンペソの弱体化がリスクとして挙げられています。現在、ペソは対ドルで59ペソという過去最低水準に達しており、2025年には61ペソを突破する可能性があると予想。原油価格の下落がペソの弱さを緩和する要因となる一方で、BSPは市場介入を強化しています。 BofAは、BSPが2025年末までに政策金利を5%に引き下げるために最大75ベーシスポイントの利下げを行うと予測しています。BSPはすでに2024年に75ベーシスポイントの利下げを実施し、現在の政策金利は5.75%です。BSP総裁のレモロナ氏は、2025年に100ベーシスポイントの利下げを実施するのは「やりすぎ」との見解を示しています。 一方、米国では連邦準備制度理事会(FRB)が2025年中に4%まで利下げを進めると予想されています。米国の利下げはフィリピンの為替市場や経済全般にも影響を与える可能性があります。2025年には米国のドナルド・トランプ大統領が再び就任する予定であり、関税、規制緩和、税制政策の変更が市場に波及する見込み。また、FRBが利下げペースをどのように調整するか、注目されています。