本当は危険生物? 凶暴化するハクチョウの「特殊事情」
千葉県・手賀沼の水辺に佇むコブハクチョウ。レンズを向けるとクチバシを大きく開き「シャーッ」と威嚇(いかく)してきた――。 【画像】驚愕!凶暴化したハクチョウの姿 外来生物のコブハクチョウは欧州が原産で、クチバシ上部に黒いコブ状の突起があるのが特徴だ。日本には1950年代に輸入され、皇居外苑の濠(ほり)で放鳥飼育されていたものが逃げて野生化。羽を広げると2mにもなる。そのコブハクチョウが、現在ジワリと増加中だという。鳥類調査などを行うNPO法人『バードリサーチ』研究員・神山和夫氏が語る。 「少なくとも500羽が国内に生息し、ペースに波こそあれ全国的に少しずつ数を増やしているようです。とくに多いのは利根川とその流域にある手賀沼や牛久沼(茨城県)で全体の4割を占めます。人からエサをもらえ水草が豊富なためです」 今では北海道や九州でも確認されるが、個体数の増加で問題も起きている。 「水辺近くの水田に植えたばかりの稲を食べてしまうのです。千葉県によると’22年度の被害額は約310万円。’20年度には東京ドーム2.3個分に相当する10万7800㎡の田んぼが荒らされ、被害額は1245万円にのぼりました。連絡を受けると市の職員が駆けつけ、水田にロープを張って追い出したり捕獲して沼に放します。しかし、縄張り意識があるので戻ってしまうこともあり、頭を悩ませています」(千葉県内の自治体職員) さらに深刻なのは、凶暴化して人を襲うケースもあることだ。北海道の湖ではバードウォッチャーが攻撃され骨折。米国イリノイ州では、コブハクチョウの世話をしていた男性が池で襲われ溺死(できし)するなどのトラブルが報告されている。 「羽で叩かれると人が軽く吹き飛ばされるほどの威力があります。彼らが凶暴化する事情の大半は、雛(ひな)や幼鳥を守るためです。農作物への被害を減らすためには個体数を減らすことが必要です。行政も給餌(きゅうじ)をしないよう呼びかけるなど対策していますが、根本的な解決には至っていません」(同前) 子連れのハクチョウは見るからに可愛いが、近づく際は十分な注意が必要だ。 『FRIDAY』2024年8月16日号より 取材・文・撮影:形山昌由(ジャーナリスト)
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