都議会に「与党」「野党」は必要か 国会とは一味違う地方自治
7月4日投開票の東京都議選で127人が選ばれた。任期は4年間。選挙では小池百合子知事に近い都民ファーストの会(都民ファ)が議席を減らし第1党の座を自民に奪われた。一方の自民も、選挙協力した公明と合わせても過半数(64)には至らなかった。そのため、「都民ファと自公の大連立与党」がまことしやかに言われ、メディア上でも「都議会与党の再構築」などの見出しが躍った。このように、それぞれの党会派や議員が小池知事に対して「与党」なのか、それとも「野党」なのか、という点が注目されがちである。 これは国会での表現(動き)に引っ張られたためだと思われるが、そもそも議院内閣制(一元的代表制)を採る国(政府)と、有権者が首長と議員を別々に選ぶ二元代表制を採用する地方自治体とではシステムが異なる。果たして地方議会でも国政で必要とされる「与党」「野党」と同じものが期待されているのだろうか。制度の基本に立ち返って考えてみよう。(行政学者・佐々木信夫中央大学名誉教授)
国の場合
まずは国政の仕組みをみてみよう。 一元的な代表制に基づく議院内閣制を採る国の場合、国民により選ばれた議員から成る国会(衆参両院)が内閣総理大臣を指名する。そして、その内閣総理大臣が国務大臣を指名して内閣を形成する。内閣を形成する国会の多数党(会派)が与党になり、少数党(会派)が野党になる。 国会(立法部)と内閣(行政部)の間に制度上の与野党関係が生まれ、与党は内閣と協調的な関係を持つ。他方、野党は内閣に対して批判的な立場をとることになる。 内閣は予算編成を含む政策決定過程で与党と緊密に連絡し協議を行うなど意思疎通を図る。各省のトップには国務大臣が就任し、国務大臣の多くは与党の国会議員が兼ねる。国務大臣は政治的任命であり、各省職員はこの政治的任命職の指揮監督下に入る。これもまた与党の意向を行政に反映するルートの1つだ。各省は関係法案の作成過程で与党側(政務調査会の各部会)の了承を事前に取り付けることが普通に行われる。