まもなく稼働TSMC熊本 4万人超が不足!?半導体人材【WBSクロス】
WBSクロス、今回のテーマは半導体人材です。半導体受託生産で世界最大手、台湾のTSMCの熊本工場が年内に量産を始め、本格的に稼働します。ただその一方で地元熊本では半導体を巡る人材不足が課題となっています。 熊本・水俣市にある中古の半導体製造装置の売買などを手がける「アスカインデックス」が立ち上げた「半導体実技総合大学校」。指導を受けているのは、半導体関連企業の若手エンジニアです。 アスカインデックスは2019年に半導体製造工場を2億5000万円で買収しました。2004年製の古い製造装置は一部の工程が手作業で、半導体製造の多くが自動化される中、古い機械を生かし、半導体作りを「体験」しながら学べる研修事業を行っています。 半導体実技総合大学校の竹内正規校長は「実機を使って研修できる施設は、日本にはうちしかない。材料も本物の材料を使っている。まさに体験型実技ができる」と話します。 2023年は企業から約250人の研修を受け入れました。今年の問い合わせは去年と比べ5割ほど増えていて、年間の受け入れ数を500人にまで拡大する計画です。 「工場ができる前にエンジニアを育てたいと。ここで1回装置を見て学びたい客や、いろいろなトップメーカーから材料を作っているような会社も来る」(半導体実技総合大学校の竹内正規校長)
半導体人材の育成を急ぐ背景が、本格稼働を控えるTSMCの熊本工場です。年内に量産と出荷を始める見込みの第1工場では1700人を雇用。来年の建設開始に向け、整地作業を進める第2工場でも1700人を雇用する計画です。 熊本工場がある菊陽町を管轄するハローワーク菊池の野島学所長は「TSMCが熊本県に来たことで企業の進出や既存の企業の工場の増設がされている。半導体の人材が不足というか、確保に努力している」と話します。 熊本県全体の今年7月~9月の平均給与は24万9725円。一方、大手求人サイトに掲載されたTSMCの求人には、月給33万3000円~月給50万円と書かれています。賃金が高騰し、半導体関連企業の間でも人材の奪い合いとなっているのです。 地元の半導体関連企業も対応に追われています。完成した半導体を検査する事業を手がける「テラプローブ」の九州事業所では来年施設を拡充する予定で、数十人を新たに採用する計画です。ただ人材が不足していることから、外国人や高卒の採用も増やす考えです。 「今のところはそれほど影響はないのかなと思っているが、これから先は厳しくなると予想している。人材流出がなければいいとは思っているので、働きやすい環境を整えて働いてもらえるように取り組んでいる」(「テラプローブ」原田啓明九州事業所長) テラプローブ九州事業所では車で40分ほど離れ、従業員が多く住む八代市との間に5年前、送迎バスを導入しましたが、このバスの台数を増やすことを検討しています。今後10年間で4万人以上の半導体人材が不足すると言われる中、新規採用に加え、社員の引き留めも重要なのです。