中小企業でも平均年収100万円増できる。小さくても世界で戦える企業になるための3つの要素
“社内大反発”から救ったのはベテラン技術者
吉川さんはそうさらっと語ったが、社内や顧客からの反発はなかったのだろうか。 「顧客より社内の反発がすごかった。こいつ馬鹿じゃないかとか、こんなやつが社長だなんてうちの会社はもうダメだと、ほとんどの人が思ったんじゃないでしょうか(苦笑)。 みんな不満があるだろうから不満を書いてくれと言ったら、300くらい出てきたんですよ。社員が100人程度しかいないのに(苦笑)」(吉川さん) それほど不満が山積していたにもかかわらず、顧客の選別ができたのはなぜなのか。ターニングポイントは、一部の従業員が支持に回ったことだったという。 「定年後に嘱託で働いていた人たちと1人ずつ個別にじっくり話をしたんです。僕のビジョンはこうで、数字はこう、クリエイティブはこうしたい。だから僕を信じてほしいと。 その人たちは東邦レオの技術を開発してきた技術者だったんですね。彼らが最初に共感してくれて、ほかの社員を説得してくれた。それが(選別を)実現できた一番大きなポイントでした」(吉川さん) 改革の成果は数字にも表れている。 2015年は1人当たりの粗利が1400万円程度だったが、2023年には2000万円に増加。吉川さんが「企業の本当の稼ぎ」と考える平均年収と1人当たり営業利益の合計も、680万円から1000万円まで上昇した。 平均年収も「この8年で100万円上げた」(吉川さん)。2030年には平均年収1000万円、1人当たり営業利益1000万円にし、一人当たりの稼ぎを日本トップレベルに引き上げたい考えだ。 「粗利は30%程度でしたがいまは40%。あと数年で50%を超えると思いますが、AppleやLVMHに比べるとまだはるかに低い。僕の中では今後60%は絶対行けると見ています」(吉川さん)
湯田陽子