中国人民解放軍で再び大粛清、最高幹部が相次ぎ失脚…習近平派閥の筆頭がなぜ?台湾武力統一の動きに深刻な影響も
中国の中央軍事委員会政治工作部長の苗華が「重大な規律違反」のため、停職中であることが11月28日の国防部定例記者会見で明らかにされた。その前日、27日付のフィナンシャルタイムズによれば、苗華派閥に属する国防部長の董軍が汚職で取り調べ中である、という。董軍の取り調べ報道については、国防部報道官は「捏造報道だ」と強く否定していたが、いずれにしろ軍部で新たな粛清の大嵐が起きつつあることは間違いない。苗華は福建省第31集団軍出身で習近平とは福建省時代からの昵懇、腹心と言ってもいい人物。その苗華の失脚は何を意味するのだろうか。 【写真】昨年は外相も不倫で失脚。お相手とされる美人キャスター (福島 香織:ジャーナリスト) フィナンシャルタイムズが報じたところによると、米国の現職、引退官僚筋の情報として、中国の国防部長、董軍が汚職容疑で取り調べを受けているらしい。具体的にどのような汚職かは不明だが、これが事実なら、中国の国防部長は、魏鳳和、李尚福に続いて、3人連続で失脚することになる。 中国で過去に国防部長が2人以上連続で失脚したのは、中国人民共和国の最初の国防部長だった彭徳懐、それを引き継いだ林彪(副首相兼務)以来だ。つまり、今の解放軍内は、毛沢東時代以来の激烈な大粛清が起きている可能性がある、と国際社会も注目した。 27日の外交部定例記者会見でフィナンシャルタイムズのこの報道について外国記者から質問が出たとき、毛寧報道官は「補風捉影(雲をつかむような話)」という微妙な回答をした。2023年夏の秦剛外相失脚の噂が出たときは、外交部は「提供できる情報がない」と回答、この表現は、外交部文法でいうと「知っているけど答えられない」というニュアンスで、今回の表現は「よく知らない」という弱い否定のニュアンスだ。 ところがその翌日の国防部の28日の定例記者会見で、この特ダネが消し飛ぶような大ニュースが飛び出した。それが中央軍事委員会政治工作部長の苗華が、重大な規律違反で停職中であるという事実だ。 苗華は中央軍事委員会における政治担当トップ。軍の人事、予算に対して強い権限を持っている。それが停職処分になっているということを、外国メディアも参加する記者会見で発表すること自体が極めて異例だった。同時に、呉謙報道官はフィナンシャルタイムズの特ダネである董軍失脚ニュースについては、純粋な捏造報道、と一蹴し、強い不満を表明した。 董軍は11月22日にラオスに行き、ラオスの人民革命党総書記と会談しており、少なくとも1週間前までは、その政治的立場が無事であることは証明されている。しかし、フィナンシャルタイムズの報道が全くのガセとも言い難い。 実は海軍上将で中央軍事委員の苗華が失脚したという噂は11月10日ごろから流れていた。