忘・新年会は「労働時間」か否か?83.3%の企業の認識と働き方改革の矛盾 岩手県の実施率、全国平均に届かず
東京商工リサーチが実施した2024年12月の「忘・新年会に関するアンケート」調査によると、岩手県内企業の忘・新年会実施率が55.4%となり、前年から8.6ポイント増加したことが明らかになった。しかし、全国平均の59.6%には届いておらず、地域経済の回復に遅れが見られる。 【画像】83.3%の企業が忘・新年会を「労働時間でない」と認識
「労働時間でない」83.3%の企業が認識
忘・新年会を実施する理由として、94.1%の企業が「従業員の親睦を図るため」と回答した。一方で、実施しない理由のトップは「開催ニーズが高くない」(63.6%)となっており、特に若い世代を中心に宴会文化への価値観の変化が進んでいることがうかがえる。 興味深いのは、83.3%の企業が忘・新年会を「労働時間ではない」と認識していることだ。この認識は、近年の「働き方改革」や「ワークライフバランス」の推進と相反する可能性がある。労働時間管理の観点から、今後この認識が問題となる可能性も否定できない。
コロナ禍がもたらした宴会文化の変容
コロナ禍以前、忘・新年会は多くの企業で恒例行事だった。しかし、パンデミックを経て、その位置づけは大きく変化した。2020年には全国の開催率が5.6%まで落ち込み、その後徐々に回復しているものの、未だコロナ禍以前の水準には戻っていない。 この変化は単なる感染症対策にとどまらず、従業員のコミュニケーションや企業文化のあり方そのものを問い直す契機となっている。特に、若い世代を中心に「飲み会まで仕事の上下関係を引きずりたくない」という意識が高まっており、従来型の宴会文化に対する疑問が提起されている。 岩手県の実施率が全国平均を下回っていることは、地域の飲食店や関連産業にとって厳しい状況が続いていることを示唆している。一方で、コロナ禍を経て、オンラインツールの活用やより小規模なグループでの交流など、新たなコミュニケーション形態も生まれている。 今後、企業は従業員の多様なニーズや価値観に配慮しつつ、効果的なチームビルディングや社内コミュニケーションの方法を模索していく必要がある。忘・新年会のあり方も、単なる飲食を伴う宴会から、より目的性を持った交流の場へと進化していく可能性がある。