10月登場「はなあかり」に、新型「やくも」と「ウエストエクスプレス銀河」の秘話も JR西日本の人気列車を手がける建築家・川西康之氏インタビュー『鉄道なにコレ!?』【第67回】
ところが、天井高が2・1メートルと低いため「かつての寝台車のような仕様で造るとお客さんが起き上がろうとすると頭がつかえ、長時間乗るのに耐えられなくなる」ことが難題となった。 モックアップ(模型)を製作して検証したところ「下段座席の床からの高さを15センチにすればお客さんが起き上がることができ、居住性を確保できると確認した」という。 ただ、下段座席が低い位置になったため「寝そべった状態だと窓からの景色を眺めることができない」ことが次の課題として浮上した。解決策として編み出したのが大きな窓への交換で「構造計算をしたところ強度などの問題もなかった」という。 できあがったのが、普通車指定席の上下2段の平らな座席「クシェット」だ。夜行列車として走る際には寝台列車のように横たわることができ、普通車指定席料金で乗れる。 ▽「地域が幸せになる仕組みと空間をつくりたい」 比較的手ごろな料金で快適に長距離を移動できるように配慮したウエストエクスプレス銀河は高く評価され、2021年度のグッドデザイン賞ベスト100に輝いた。今年9月で運行開始4年を迎えても予約を取りにくいほどの人気が続いている。
川西氏にデザイナーとして採点してもらったところ「百点満点で80点は取れているのではないか」と合格点を付けた。今後の鉄道デザインでも「お客様や地域の人々が鉄道に参加することで、その地域が幸せになる仕組みと空間をつくりたい」と意気込む。 ※『鉄道なにコレ!?』とは:鉄道に乗ることや旅行が好きで「鉄旅オブザイヤー」の審査員も務める筆者が、鉄道に関して「なにコレ!?」と驚いた体験や、意外に思われそうな話題をご紹介する連載。2019年8月に始まり、ほぼ月に1回お届けしています。鉄道以外の乗り物の話題を取り上げた「番外編」も。ぜひご愛読ください!