10月登場「はなあかり」に、新型「やくも」と「ウエストエクスプレス銀河」の秘話も JR西日本の人気列車を手がける建築家・川西康之氏インタビュー『鉄道なにコレ!?』【第67回】
これに対し、「やくも」ならば「岡山駅で山陽新幹線と直結しているので実は一番便利だ」と指摘。「座敷のような一角があれば、親子連れらが楽に過ごせると思い、JR西日本に提案した」ことがセミコンパートメントシートの導入につながった。 ▽ウエストエクスプレス銀河の種車に117系…初めは難色 一方、2020年9月に運行を始めたウエストエクスプレス銀河は山陽線経由、山陰線経由の両方で京都駅と下関駅(山口県下関市)を結ぶなどしている。国鉄時代に製造された通勤型電車の117系を改造しており、川西氏は改造に使う「種車」を117系にすることを「JR西日本から指定された」ものの自身は当初難色を示したと打ち明けた。 川西氏が代わりに提案したのが廃止された寝台列車(ブルートレイン)に使われていた客車や、JR西日本が大阪駅と北陸地方を結ぶ特急「サンダーバード」などに使ってきた特急型車両681系だった。 681系はあまり活用されていない編成があったのに加え、北陸新幹線の敦賀―金沢間の延伸開業後にサンダーバードの運転区間が短縮されるため余剰車両が出ることも想定したためだ。しかし、「駄目ですと却下された」と苦笑する。
川西氏が117系に難色を示したのは1979年に登場した古い車両なのに加え、「利用者が長時間を過ごす長距離列車に使うには中途半端な仕様だと考えていたからだ」と解説する。「車内の(床から天井までの高さの)天井高が2・1メートルと低い上、通勤型電車なので冷房装置が1両当たり1カ所しかないため個別空調や換気が難しいことが課題だった」と話す。 これに対し、JR西日本発足後の1992年に登場した681系は比較的新しい上に「天井高が2・3メートルと高い」のも魅力的に映った。 実際、JR西日本はウエストエクスプレス銀河を開発中の2019年に681系の先行試作車を廃車、解体した。川西氏は「後になり、JR西日本から『(種車を)あれにしても良かったな』と言われた」と苦笑いした。 ▽くつろげるいすやテーブルを配置できるゆとり「結果的に良かった」 ただ、「結果的に種車が117系で良かったと思う」と川西氏は振り返る。117系は客室の側面の扉が2カ所あり、車端部に空間ができるため「利用者がくつろげるようにいすやテーブルを設けたフリースペースを設置できるなどゆとりにつながった」と指摘する。