10月登場「はなあかり」に、新型「やくも」と「ウエストエクスプレス銀河」の秘話も JR西日本の人気列車を手がける建築家・川西康之氏インタビュー『鉄道なにコレ!?』【第67回】
一方、681系の扉は車両の端に近い位置にある上、「扉に面した乗降部分のデッキは固定されていて変えられない」という。このため、681系を種車に用いていた場合、車端部にフリースペースを設けるのが難しかった。 117系のどの編成を改造するかを選ぶため、川西氏が向かったのはJR西日本の車両基地「岡山電車区」(岡山市)だった。初期に造られた「0番台」と、窓や台車などを新しい仕様に変えた1986年製造の「100番台」が選択肢にあったが、種車に使ったのは80年製の0番台の6両編成だった。 川西氏は古い編成を選んだ理由を「0番台の方が改造しやすかったからだ」と話す。ウエストエクスプレス銀河の最上級座席となる「グリーン個室」を広く確保するのに0番台のレイアウトの方が好ましく、床下の台車も良いという判断だった。 「100番台は(空気ばねを使って構造を簡素化した)ボルスタレス台車の初期の製品を履いており、乗務員から『ぼよんぼよんと揺れる』という声を聞いた。それならば特急用車両と同じ台車だった0番台の方が良いだろうと思った」
▽たまたま同乗した社長に「走る音がうるさいですね」 もっとも、100番台の客室の窓は一部が下降して開けられる簡素な窓なのに対し、0番台の窓は開閉できる2段式で「走るとガタガタと音を立てる」のが難点だった。しかし、「当初は予算がかなり限られており、窓もそのまま使うように言われていた」という。 風向きが変わったのは、岡山電車区からの帰りの出来事だった。「実際の車両に乗ってみようということになり、岡山駅から倉敷駅(岡山県倉敷市)まで117系の快速電車に乗ると、たまたま目の前にいたのが当時社長(前社長)の来島達夫氏だった。『この電車(と同じ117系)を改造するのですが、走る音がうるさいですね』と話したところ、『そうですね』と同意してもらった」 それをきっかけに「改造に使える予算が上がり、客室の窓を総取っ換えすることができた」そうだ。 ▽2段ベッドのような座席「クシェット」を実現 だが、客室の天井が低いことは課題として残った。川西氏が目玉の一つとして導入を思いついたのが寝台列車の2段ベッドのような座席だ。