10月登場「はなあかり」に、新型「やくも」と「ウエストエクスプレス銀河」の秘話も JR西日本の人気列車を手がける建築家・川西康之氏インタビュー『鉄道なにコレ!?』【第67回】
うち1両には乗客がゆったりと過ごせる個室を設け、グリーン車を超える「スーペリアグリーン車」とする。川西氏は「ウエストエクスプレス銀河と同様に地域共生の役割を狙う観光列車で、鉄道会社と地域をつなぐ受け皿としてのデザインが求められた」と話す。 ▽381系からの「縦目」引き継ぎに試行錯誤 日本国有鉄道(国鉄)時代以来、約40年ぶりの特急「やくも」の新型車両として今年4月6日に運転を始めたのが、ブロンズ色が基調の273系だ。先代の381系は国鉄時代に製造された特急型車両として今年6月15日に最後の定期運転となり、バトンを受け継いだ273系も注目を浴びた。273系は第23回「日本鉄道賞」の大賞に輝いた。 川西氏が自身の発案で「381系のデザインを引き継げるようにした」と明かしたのが、273系の先頭部の左右にある「縦目」のヘッドライトだ。白い発光ダイオード(LED)の前照灯と、列車が近づいているのを遠方から気づきやすくするだいだい色の補助灯が縦に並び、丸い前照灯と赤い後尾灯が縦に並んでいる381系をほうふつとさせる。
しかし、「縦目」にすることを試みたところ「LEDと言っても前照灯から発する光の熱がすごく、熱をどのように逃がすかが課題になった」という。このため、製造した近畿車両(大阪府東大阪市)がどのように熱を逃す方法を検討し、「光源から上へ逃げる熱を横に逃がす板を開発できたため現在の形にした」と振り返った。 ▽親子連れでもくつろげる「セミコンパートメント」 273系で採用したユニークな座席が、乗客が足を伸ばしてくつろげるように座面を平らにできる「セミコンパートメント」だ。4両編成のうち1両に2人用、4人用が二つずつあり、2人または3~4人で通常の指定席特急券を買えば利用できる。 川西氏は導入の狙いについて、「やくも」の利用者数が以前より減った中で「特に小さな子どもがいる子育て世代の利用を伸び代と考えたためだ」と説明した。 小さな子どもがいる家族が帰省や旅行のため、山陰地方までマイカーを長時間運転したり、航空機や高速バスに乗せたりするのは大変だ。