第67回グラミー賞ノミネート! 宅見将典インタビュー “グラミー賞を目指す”と公言してから実現までのサクセスストーリー
――そして、Masa Takumi名義でリリースした楽曲「Kashira」が『第67回グラミー賞』の「グローバル・ミュージック・パフォーマンス」部門にノミネートされました。「Kashira」は、4月に公開されたVシネマシリーズ「日本統一」の最新映画『氷室蓮司』主題歌。日本の伝統楽器や二胡と欧米的なビートを融合させた楽曲ですね。 主演・プロデューサーの本宮泰風さんから「『Sakura』のような曲をお願いします」というお話をいただいたんです。映画『氷室蓮司』は台湾ロケだったので、メインの楽器を中国の伝統楽器の二胡にして。アメリカでは二胡でメロディを弾いている楽曲はあまり聴かれていないだろうし、三味線との絡みも面白いかなと。グラミーにおいては、「グローバル・ミュージック・パフォーマンス」にエントリーしました。アルバムではなく楽曲を対象にした部門なんですが、ノミネートの数は5作品だったり6作品だったり、年によって違うんですよ。今年は6作品がノミネートされたのですが、私の名前が呼ばれたのは6番目でした。心臓に悪いです(笑)。 ――最近は「目標はグラミー賞」とコメントする日本のアーティストも増えていますが、なかなか難しいですよね……。 今年度の『第67回グラミー賞』は日本の名だたるアーティストもエントリーしてるんですよ、実は。僕がパンドラの箱を開けてしまったというか、もしかしたら日本の大手レーベルの人たちも意識し始めたのかもしれないですね。「グローバル・ミュージック・パフォーマンス」は“ユニークなスタイルであればいい”という規定なので、今年は(エントリーする日本のアーティストが)一気に増えました。ただ、日本のアーティストのみなさんはエントリーしていることを言わないんですよ。ノミネートされなかったら恥ずかしいと思ってるのかもしれないけど……。 ――宅見さんはずっと「グラミーを目指す」と公言していましたからね。 世界最大の音楽のオリンピックを目指しているんだから、無理で当然だし、何度も悔しい思いをしてきて。2016年に初めてエントリーしてノミネートを逃した後、Facebookに書いたんですよ。「悔しいから本気で狙う。移住します」って。知り合いからは「あーあ、言っちゃった」という反応でしたけど(笑)、そこからがむしゃらに頑張って、『Sakura』でグラミー賞を取って。「目指すって公言して、ホントに取ったのは宅見だけじゃない?」と言われました。 ――今後の活動のビジョンについても教えてもらえますか? Sly&Robbieの作品に関わってから、13~14年くらいグラミー賞にすべてのエネジーを注ぎ込んできたんですが、『Sakura』で受賞し、「Kashira」がノミネートされたことで、とりあえず一区切りかなと思っているんです。和楽器の力を借りて、日本人としての美を最大限に追求した作品をアメリカで表現するという活動を続けてきましたが、グラミー賞を毎年目指すのは正直大変すぎるので、ちょっと距離を置いて、自分名義の作品作りを見直してみたくて。 ――音楽家として次のタームに向かう、と。 アメリカでも少しは興味を持ってもらえるようになりましたからね。もちろんアーティストの方々への楽曲提供の仕事は続けていくし、映画のサウンドトラックなどの仕事は今後も増やしていこうと思っています。後はグラミーを目指す若い世代を応援することも考えていて。アメリカの音楽業界へのアプローチだったり、グラミー賞のエントリーのやり方といった方法論ですよね。「メジャーで売れてないとダメなのか?」と言えばそんなこともないし、そういうエビデンスは全部僕は持ってるわけじゃないですか。というのは、1からスタートして英語を学んで投票メンバーになり、自分でエントリーして移住して海外レコーディングや撮影、さらに広告もアメリカで打ってパブリシストを雇いプロモーションもして、そこからノミネートを経て受賞を経験した日本人は多分僕だけなんじゃないかな……と。 日本人のアーティストでもグラミーを目指していいし、自分がプロデューサーになって、お手伝いできたらいいなと。ゆくゆくは日本のアーティストや音楽家が世界に羽ばたけるようなプラットフォームを作りたいなと思っています。 Text:森朋之 <リリース情報> ■Masa Takumi シングル「Kashira」 配信中 ■Masa Takumi アルバム『Sakura』 発売中