北九州市立大の学生らが再生した大正の洋館 「門司画廊MoGA」
北九州市門司区の山裾に100年ほど前に建てられた洋館が5月、北九州市立大の学生らが運営する「門司画廊MoGA」に生まれ変わり、注目されている。 【写真】にぎわいが戻った洋館
歴史ある建物を守りたい
2階建ての洋館は企業の保養所や別荘として使われた後、2002年からは、カボチャをモチーフにした独特の作風で知られる地元の画家・川原田徹さんの私設画廊「カボチャドキヤ国立美術館」として活用されていた。しかし22年に、川原田さんやボランティアスタッフの高齢などを理由に閉館した。
そのバトンを引き継いだのが、北九州市立大の学生たちだ。竹川大介教授(人類学)が主宰する「九州フィールドワーク研究会」が小倉北区の旦過市場で運営していた交流スペース「大學堂」が22年の大火で被災。研究会が、新たな活動の拠点として、洋館の管理運営を担うことになった。
JR門司港駅から坂道を上って車で5分ほど。閑静な住宅街に残る延べ約200平方メートルの洋館は、1999年には取り壊しが決まっていた。解体工事のための足場が組まれている最中、この歴史ある洋館を守ろうと、ゆかりのある人や地元住民らが立ち上がり、建物の解体中止と保存が実現した経緯がある。
毎週土曜にカフェを営業
クラウドファンディングで集めた約150万円で、屋根の補修やキッチンの改修などを行い、オープンにこぎ着けたMoGA。コンセプトは、洋館が造られた当時をヒントにした「大正モダンガール」だ。市立大の学生たち15人ほどが、大學堂での経験も生かして毎週土曜にカフェを開き、その収益や寄付金を運営費に充てている。
窓の意匠や家具などが、大正ロマンを感じさせる洋館。再オープンを知った地元の人たちは「ぜひ、ここで使ってほしい」と、古い机やカーペット、オルガンなどを譲ってくれたそうだ。
取材で訪れた七夕の7月7日は、大學堂設立から16年の記念として「モダンガールとよそほひ展―1920~30年代の洋装とSPレコードコンサート」が開かれた。日本モダンガール協會代表の淺井カヨさん(48)が、大正時代初期の化粧具袋や、香りがかすかに残る100年ほど前のせっけんを来館者の間近で披露し、驚きと感嘆の声が漏れた。