【インタビュー】長谷川唯、マンチェスター・シティ3年目の挑戦「最高の環境がある。日本は自分がいる国と思ってもらえるように」
■前半は退屈な試合になりがちだけど…
―――マンチェスター・シティがどういったサッカーを志向しているか、改めて教えてください。 長谷川 綺麗な4-3-3で、ポジションを大事にするサッカーです。流動的になることはあまりありません。同じシステムでもベレーザ時代はもう少し自由がありました。シティでは特にアンカーである自分は上がらずにバランスを取り、ビルドアップでしっかり中央で関わります。唯一、サイドバックが中に入って、3バック2ボランチのような形にするときはありますが、サイドの選手は相手の背中を取るぐらい幅を取ってインサイドハーフの選手のスペースを空けることが基本的です。サッカーを理論的にやっている感が強く、女子でこういうサッカーをしているチームは他に無いと思います。 ―――頭の疲労度は違いますか? 長谷川 元々ベレーザ時代から考えてプレーするタイプでしたし、永田さんから教わったことがシティでも生きているので、ついていけない感覚はなく、むしろ「もっと少しこうしてほしい」という感覚を持つ余裕がある状態でシティに行けたので、ベレーザ時代とポジションは違いますけど、当時アンカーの選手にやってほしかったポジショニングやプレーは頭に入っていたので、すんなりチームに入ることができたと思います。 ―――テイラー監督が熱望もしたと思いますが、アンカーのポジションで定着して出続けていることはどう感じていますか? 長谷川 加入初年度はすぐに開幕を迎えたこともありましたし、ウェストハムでの最後の練習試合でけがをしての加入だったので、すごく難しい状況でしたが、たまたま代表期間があったりして、監督と話す時間を持てたんです。監督はどこのポジションができるかを聞いてきたので、インサイドハーフを指さしたんですけど、「それもそうだけど、アンカーもウェストハムでやっていただろ?」みたいに言われて。正直、アンカーはやっていなくて、守備がうまくいかないと勝手に入れ替わって後ろをやったり、ビルドアップで下がってボールを受けることを自主的にやっていて。それはウェストハムの監督も理解してくれていましたけど、テイラー監督からはアンカーをやっているように見えたのかもしれません。 シティはアンカーの選手がいなくなって、獲得したのが自分だったので、可能性としてゼロではないと思いつつ、誰かがアンカーをやるだろうと思っていたら、「やってくれ」と。でも自分としては、守備は好きですし、特にその部分で自分の良さが出せるようになったと思っています。それまでは前のポジションでのイメージが大きく、攻撃の部分にフォーカスしてもらいがちでしたが、今はシティでのプレーも見てもらえるようになり、そこは良かったですね。 ―――攻撃でも長谷川選手を起点にする形が武器でしたが、相手チームも対策をするようになり、マンマークが付くことも多いです。一方で、それを逆手に取って、CBの選手に持ち上がりを促したり、一つ前のポジションの選手にパスをつけさせるように、ボールを触らずとも立ち位置でビルドアップに貢献するようなシーンを多く見ます。 長谷川 特にビルドアップの部分では、マンツーマンで付かれる試合が多くなって、特に前半は正直自分にとって退屈な試合になりがちです。でも、CBが持ち上がるために自分はわざと歩いてステイしたりもしています。監督が求めている部分でもありますし、自分がそういうプレーをして貢献していることもわかってくれるチームです。我慢ではないですけど、そういうプレーもしっかり見てくれているので、苦になりません。あとは後半に相手がバテたり、前に出てきてくれることも多いので、そうすればボールを受けるようになり、ビルドアップの中心になることも多いので、基本的に前半は我慢という試合が多いと思います。