「彼らをサイボーグのように見ているのかなと…」高校駅伝“留学生3km区間規制”に元・仙台育英高監督が思うこと「本心で言えば残念です」
驚異のごぼう抜きや大逆転など、高校・大学駅伝レースに大きな影響を与える「留学生」の存在。2024年の全国高校駅伝からは、「留学生の起用は最短区間」に限るという新ルールが適用される。レースへの影響力を減らす意味合いが強いこの改正を、留学生を擁する指導者はどのように見ているのか。かつて仙台育英高校を率いた、大東文化大学の真名子圭監督の“率直な思い”とは――。《NumberWebインタビュー全2回/大学駅伝編を読む》 【貴重写真】「えっ、あの金メダリストも日本の高校出身?」卒業後も活躍した都大路発の留学生たち…「今って坊主じゃないの!?」様変わりした高校駅伝強豪校の髪型もあわせて見る 全国高校駅伝――すなわち都大路と留学生の歴史は、今から32年前の1992年までさかのぼる。 この年、宮城県代表の仙台育英が初めてケニア人留学生を送り出した。そして翌年、男女ともふたりずつ留学生を起用した同校が、史上初のアベック優勝を遂げている。 留学生の次元の違う走りは、日本人選手や観客に大きな衝撃を与えた。しかし同時に、一人で全体の勝敗を決めてしまうほどの圧倒的な力ゆえに、その起用について批判も噴出した。そこで高体連は1994年に、留学生のエントリーは2人、出走は1人までという規定を設けている。 ただその後も2007年まで、最長区間の1区はケニア人留学生が区間賞を席巻し続けた。 2008年には男女とも留学生の起用は「1区を除く区間」という規定に変更。その結果、男子は2番目に長い3区(8.1075km)か4区(8.0875km)、女子は先行逃げ切りを図るための2区(4.0975km)かアンカーの5区(5km)が、事実上の“留学生区間”になっていた。
徐々に行われてきた「留学生規制」
こうして徐々に制限が設けられてきたものの、留学生の走りが勝負に大きな影響を与えてきたことは否めない。 実際、08~23年の16大会のうち、男子11、女子7大会で留学生を擁するチームが優勝している。前回の都大路で、神村学園高のアンカー、カリバ・カロライン(現・日本郵政グループ)がラストのトラック勝負で仙台育英を逆転し、優勝を果たしたのは記憶に新しい。 今年の都道府県予選から適用された「留学生は最短区間に限定する」との新ルールについて、日本陸連や高体連などでつくる大会実行委員会は「留学生の特性の一つであるスピードを最短区間で発揮してもらい、そこに挑む日本人選手のスピード力向上を期待したい」としている。だが、それは表向きの理由で、実際は「走る距離を短くすることでレースへの影響力を減らす」という意味合いのほうが強いのだろう。 「僕は正直なところ、本心で言えば残念です」 そう語るのは、大東文化大の真名子圭監督だ。 真名子監督は2012年から10年間、仙台育英の長距離男子ブロックの監督を務めた経歴を持つ。東日本大震災の影響とともに、前監督の退任に伴う主力選手の集団転校という事態に見舞われたチームを立て直し、2019年に都大路で12年ぶり8度目の優勝に導いた。その手腕が買われ、2022年に母校の大東文化大の監督に就任している。 仙台育英時代には、2015年大会の3区で15人抜きの快走を見せたサイラス・キンゴリ、17年大会の3区で19人抜きを披露したルカ・ムセンビ、19年大会の6区で区間新をマークしたムチリ・ディラングら、複数のケニア人留学生を指導。大東大初の留学生であるピーター・ワンジル(4年)は、高校時代からの教え子でもある。
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