「彼らをサイボーグのように見ているのかなと…」高校駅伝“留学生3km区間規制”に元・仙台育英高監督が思うこと「本心で言えば残念です」
留学生のおかげで「日本陸上のレベルがあがった」
言葉や文化の壁に直面しながら奮闘する留学生たちを間近で見てきた真名子監督は、彼らの置かれた厳しい境遇を熱く語る。 「箱根駅伝が大きくなっているおかげでもありますが、日本人選手はある程度走力があれば、インターハイに出られなくてもスポーツ推薦で進学できるケースがほとんどです。 でも、留学生は高校3年間でしっかりとした実力を身につけ、発揮しなければ母国に戻らなければいけない。そういうプレッシャーの中で、誰よりも努力して苦労している姿を見てきましたし、彼らのおかげで日本の陸上のレベルがあがった面も絶対にあると思うんです」 仙台育英は初期こそ日本人選手の区間順位が20~30番台なども目立ち「留学生頼み」の印象も拭えなかった。だが、その後は留学生とともに日本人選手も全国トップクラスへと成長してきた。 2019年の全国優勝したレースでは、1区の喜早駿介が区間6位と好発進。2区の白井勇佑が区間賞の走りで3位へと引き上げ、その後もすべて区間一桁以内でつないだ。6区のムチリが先頭・倉敷高との差を48秒から5秒まで詰め、アンカーの吉居駿恭がラスト200mで逆転。留学生の働きもあったとはいえ、むしろ高い総合力で勝ち取った「優勝」だった。 また、ケニア人ランナーにとって日本で教育を受け駅伝で活躍することは、母国での貧困から抜け出すチャンスでもある。留学生の多くは高校を卒業した後も、日本の大学や実業団で走り続けることを目標にしており、都大路はそのアピールの場でもある。 しかし、最短区間への限定は「彼らの将来を閉ざしてしまうのでは」と真名子監督は危惧する。 「これまで彼らの走れる最長区間は男子の場合8kmで、その結果で進路も決まってきたわけです。でも、3kmの結果なんて実業団から見れば獲得するかどうかの指標にはなりません。そういう意味でも彼らの未来を壊してしまうのではないかと思うんです」 現在、仙台育英にはケニア人留学生が男女複数在籍する一方、台湾から一般入試で留学してきた男子選手もいる。新ルールは陸上が盛んなアフリカだけでなく、駅伝に憧れて来日する他地域出身の学生の活躍の場も「国籍」を理由に狭めかねない。 「3kmの区間に限定というのは、彼らをひとりの高校生アスリートとしてどう見ているのだろうと。まるで機械やサイボーグのように見ているのかなと思ってしまいます」 留学生を、日本人選手と同じく一学生アスリートとして大切にするのか、それとも単なる「戦力」とみなすのか。真名子監督の言葉は、留学生への眼差しが後者に傾いている現状を鋭く突く。
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