産業医が教える、有給休暇を使って休むべきタイミング。寝だめをすると生じる「社会的時差ボケ」に注意。体力とメンタル、どちらも質の高い休養をとる方法とは
厚生労働省が実施した「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間でメンタルヘルス不調により1カ月以上休業、または退職した労働者がいた事業所の割合は、13.5%だったそうです。会社を休むことにためらいを感じてしまう方もいるなか、産業医・心療内科医の薮野淳也先生は「今や休職は、めずらしいことではなくなっている」と話します。そこで今回は、薮野先生の著書『産業医が教える 会社の休み方』から「正しく、適切で、安全な」休み方を一部ご紹介します。(構成/橋口佐紀子) 【書影】数々の企業と実例を見てきた医師が語る「正しく、適切で、安全な」休み方とは?薮野淳也『産業医が教える 会社の休み方』 * * * * * * * ◆休みの質も大事 最近、「社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)」という言葉が注目されています。平日は仕事に追われて十分な睡眠時間が取れず、その分、休日に寝だめする。そうした生活が体内時計をずらし、朝起きられなくなったり、昼間眠くなったり、夜眠れなくなったりすることを社会的時差ボケといいます。 休むことには、体力的な休養とメンタル的な休養があります。 疲れているときにやってしまいがちなのは、一日中、横になって寝て過ごすという休み方。平日に疲れた体が癒され、体力は回復します。 平日の仕事で疲れ切ってしまう人のなかには、金曜日の夜から土曜日の日中にかけてずっと寝ていて、夕方の5時ぐらいにようやく起き出す、なんて人もいるのではないでしょうか。そうすると、夜12時前に寝ようと思ってもなかなか眠くはならないでしょう。 その結果、2時、3時を過ぎてからようやく寝て、朝は起きられず、また日曜の夜も寝られなくなって、寝不足のまま月曜日の朝を迎える……ということになりかねません。 体力を回復させることも大事ですが、私が、さらに重要だと思うのが、リズムのなかで休むことです。睡眠リズムも生活リズムも乱さず、いかに質の高い休養をとれるかが月曜からのパフォーマンスを左右します。
◆リズムのなかで休むことが大切 また、週末に遊びすぎて疲れた経験はありませんか? 土曜日にディズニーランドに行って、日曜日にはキャンプやライブに出かけるなど、土曜も日曜もフルに出かけるような過ごし方は、心の栄養にはなりますが、確実に体力は削られます。 楽しいイベントとはいえ、週末に予定を詰め込みすぎると、いざ仕事が始まる月曜日にはガス欠に陥ってしまうので、お勧めできません。 私自身も、つい最近、週末にプライベートの予定を入れすぎて、失敗したなと反省したところです。楽しい時間を過ごせて心の休養にはなった一方で、体の休養にはならず、バランスが大事だなとつくづく実感しました。 そのバランスの取り方は人それぞれですが、全員に共通してお勧めしたいのは、生活リズムは固定したうえで休むということです。体力回復のためとはいっても寝すぎて生活リズムを乱してはよくありませんし、週末にアクティブに過ごすのは気分転換になりますが、一晩寝ただけでは疲れが取れず、日中も眠くなるようであれば、それは遊びすぎです。 ビジネスパーソンにとっては、平日にしっかり働けるリズムを整えることは基本でしょう。そうであれば、週末も、そのリズムのなかで休むべきだと思います。
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