「M-1の写真が撮りたすぎて漫才を始めるかも」お笑い芸人 かが屋・加賀さんが写真にハマる理由
お笑いコンビ・かが屋の加賀さんは、数多くの芸人のステージや芸能人のポートレートなどを撮影してきたことでも知られる大の写真好きです。写真集を発表するなど、カメラマンとしての腕も評価されている加賀さんに、写真を撮ることの魅力や、写真がメンタルヘルスに与えるいい影響について、独自の考えを伺いました。 写真集も発表!かが屋 加賀さんインタビューフォトギャラリー
■写真好きになったきっかけは、バイト先の店長と行った競馬場 ──加賀さんがカメラを始めるきっかけを作ったのは、かつてのバイト先の店長だったと伺っています。 加賀さん バイト先の店長が競馬好きな人で、僕を競馬に誘おうとあの手この手で気を引いてきてたんですよね。店長はカメラ好きでもあったので、僕の気を引くアイテムのうちのひとつにカメラがあって、「馬の写真撮るのおもしろいよ、お前も来てみたら?」と誘ってくれたんです。言われるがままに競馬場についていって、店長からカメラを借りて馬を撮ってみたらすごく面白くて。そこからはひとりでも競馬場に通うようになって、思ったよりカメラにのめり込んじゃったというか。 ──馬を撮るようになって、ご自分でもカメラを買ったんですか? 加賀さん はい。すぐに自分でもカメラが欲しくなって、10万円くらい握りしめて吉祥寺のカメラのキタムラに行ったら、「その値段で買ったカメラじゃたぶんすぐに満足できなくなるから、背伸びしてでも高いやつを買ったほうがいいよ」と店長さんに強く説得されまして。結果的にパソコンとか周辺機器も含めて50万円くらいになっちゃって、半べそをかきながらローンの契約書にサインすることになりました(笑)。 でも、これだけ払ったなら元をとらないと、という気持ちが芽生えたおかげで熱心に写真の勉強をしたところはあったので、今思えばあのとき、店長さんの言う通りにしてよかったなと。そのカメラ、結局8年も使ったんですよ。 ■誰にも見せないつもりで撮った写真がコントのきっかけになることも ──当時、写真のどんなところに魅力を感じたのでしょうか? 加賀さん たぶん、性に合ってるなと思ったんですよね。ピースの又吉さんと作家のせきしろさんの共著に『カキフライが無いなら来なかった』という自由律俳句の本があるんです。個人的にとても大きな影響を受けた1冊なんですけど、その本の中にも写真が多用されていて。日常のなんでもないシーンを写した写真ばっかりなのが面白くて、自分でもこういう写真を撮ってみたいなと。 ──加賀さんはご自分でも自由律俳句を詠まれていますが、自由律俳句と写真に共通点を感じることはありますか? 加賀さん そうですね。俳句ってそもそも、写真というものがなかった時代に、旅行やお参りに行った人が景色を記憶に残しておくために詠むものでもあったと思うんです。自由律俳句には特に当時の文化が色濃く残っているので、「そんなところわざわざ見る必要ある?」みたいなシーンにこそ注目するというか。だからたしかに写真と自由律俳句って意外と似てるし、いま思えば、そういう部分に惹かれて僕も写真を好きになったのかもしれないです。 ──加賀さん自身が写真を撮るときも、一見なんでもないシーンこそ残しておきたい、という気持ちが強いんでしょうか? 加賀さん そうかもしれません。誰にも見せないつもりで撮った写真が、あとからコントのきっかけになることもたまにあるんですよ。 たとえば前に、コンビニの駐車場に停まってるスクーターの前でカップルが立ち話をしているシーンを見たことがあるんです。スクーターの持ち主はおそらくそのカップルではないんですけど、カップルの話が盛り上がっちゃってるものだから、本当の持ち主はスクーターに乗れずに立ち往生するしかない。 そんなシーンを撮影していたことがあって、その写真をもとに「自転車」というコントを作ったんです。だから、一見なんでもないシーンのようでいて、実は人の気持ちがそこに写り込んでる……みたいな写真が好きなんですよね。