検察官の定年延長問題 忘れてはいけない3つのキーワード
●世界で標準的な「緊急権」ではない
中野教授は、自民党が改憲イメージとして掲げる4項目のうちの「緊急事態条項」にも言及しました。 緊急事態条項では、大災害などの際、国会での法律制定を待つ時間がない場合に、内閣が法律と同等の効力を持つ政令を出すことができるとされています。安倍首相は5月3日の憲法記念日のビデオメッセージにおいて、新型コロナウイルスが感染拡大する中で「国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくべきか。そのことを憲法にどう位置づけるかは、極めて重く大切な課題である」と訴えました。 それに対し、中野教授は、安倍首相らが掲げる「緊急権」は「独裁権」であるといい、「世界的に標準としてある緊急権ではない」と指摘します。 中野教授によると、現在の憲法でも、緊急事態には参議院が「緊急集会」を開いて国会の立法機能を代行できる規定があります。アメリカにおいても、緊急事態時に大統領が勝手に法律をつくっていいという制度にはなっていないとして、「緊急権というのは、リーダーシップを発揮して、行政府の長が議会にちゃんと法律を作りなさいと働きかけることだ。権力の分立が妨げとなって対応が遅れているわけでもないのに、単に権力を集中させたいということが先行している」と慎重な議論が必要だとの考えを示しました。