【解説】「時間的余裕」消えた?12月利上げに含み 日銀が注目する“海外経済リスク”と利上げ“打ち止め”のタイミング
10月の日銀金融政策決定会合で、政策金利は0.25%に据え置かれる結果となった。展望レポートでは、米国をはじめとする海外経済の動向を注視する姿勢が示され、物価見通しも若干下方修正された。会見で植田総裁は、リスクは徐々に低減しているものの、海外経済の不透明感は残ると指摘。「時間的余裕」という表現は使わず、12月の追加利上げへの含みを残した。大和証券チーフエコノミストの末廣徹さんとTBS経済部 佐藤祥太デスクが、今回の日銀の判断の背景と、今後の政策運営を巡る思惑を読み解く。(10月31日配信「The Priority」より) 【動画でみる】「展望リポート」から読み解く日銀の思惑と更なる“利上げ”のシグナル ■消えた「時間的余裕」 意味するものは 佐藤: 日銀は政策金利を現状維持としましたが、これは事前の予想通りの結果でした。注目すべきは、展望レポートにおいて「米国をはじめとする海外経済の今後の展開や、金融資本市場の動向を十分注視し、我が国の経済物価の見通しやリスク見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要がある」という文言が新たに加わったことです。 末廣: これは、日銀が米国経済を気にしていることを示唆しています。つまりドル円も気にしてるのかなという印象が強いですね。ただ難しいのが、この8月の例で言うと、8月以降、海外経済を日銀は気にしている。その流れで言うとこの文章、下振れリスクの話をしているのかなと読みそうになるんですけど、実は下振れリスクとも言っていないんです。例えば米国経済が思ったより強くて、海外経済が思ったよりも強くて…というのも、これも今後の展開の一つなので実はあまり深い意味はなくて、とにかく「今回利上げをしなかったのは、米国経済をはじめとする海外経済が今ちょっとよくわからないので今後の展開次第ですよ」って言っているだけで。 佐藤: なるほど。ステイ(現状維持)のための一文、という。 末廣: そうですね、これ自体が次の12月の利上げをするのかしないのかということにはあんまり関係はない、どちらとも取れるニュートラルな文章なんです。でも言えるのは、12月に利上げする可能性はあります、ということなんじゃないかなと思います。