ヤフオク7万円のシトロエン・オーナー、エンジン編集部ウエダ 入手困難なパーツを求めてふたたび海外行きを企てる! その1【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#55】
ヤフオク7万円エグザンティア、海外メディアで絶賛!?
ヤフー・オークションで7万円のシトロエン・エグザンティアを手に入れ、10カ月と200万円かけての大規模修復後、走り出したエンジン編集部員ウエダによる自腹散財リポート。今回はポーランドからやって来たフランス車フリークとのショート・トリップの模様と、ふたたび海外へ出かけることになるきっかけをご報告する。 【写真19枚】エグザンティアで世界とつながったウエダの次の冒険と最近の愛車の故障(笑)はこちらで! ◆冒険のはじまりは一通のメール それは、すっかり秋めいてきた2023年9月のことだった。この日僕の手元に届いた一通のメールが、2024年の新たなる珍道中のはじまりとなったのである。 メールの送り主はポーランドでフランス車の情報を発信しているウェブサイト、フランクスキー.pl(francuskie.pl)代表、イエンドジェイ・フミレフスキ(Jedrzej Chmielewski)さんだった。本リポートでもこれまで番外篇として何度か報告してきたが、2023年の春、僕は彼に様々なサポートしてもらってポーランド・ワルシャワを訪ねることができた。 そこではエグザンティアの生誕30周年イベントに参加し、さらにはシトロエンの創始者、アンドレ・シトロエンの若き日の足取りを追い、後にアンドレが掲げることになるダブル・シェブロンの起源となった、歯車を見た場所まで招待してもらった。 ワルシャワの西、ゴウォフノ(Glowno)市郊外にあるウッジ(Lodz)という村の古い工場横の小さな堰は、いわばすべてのシトロエン車にとっての聖地といってもいい。僕が訪れた時は何もない静かな場所だったが、その後イベントがいくつも開催され、シトロエン・スクフェル(広場)としてモニュメントも置かれている。 イエンドジェイはこの聖地を世に知らしめようと精力的に活動を続けており、アンドレの孫にあたるアンリ.J.シトロエンまでウッジへ招待し、ワルシャワで講演会などを含む、大々的な催しを行ったりもしている。 メールには彼と二人三脚でフランクスキー.plを育ててきたKrzysztof Gregorczyk(クシシュトフ・グレゴルチク)さんというこのサイトの編集長が、富士山の麓で開催されるカングー・ジャンボリーを取材するべく、日本へやって来ることが記されていた。 クシシュトフとはエグザンティア30周年イベントの夜にすこし挨拶を交わした程度だったので、あらためてフランクスキー.pl内の記事を見直してみたのだが、リポートの数はなんと2000本以上あった! フランクスキー.plは2024年で20周年を迎えるというから、少なくとも年間100本以上を配信しているわけだ。フランスおよびステランティス・グループのクルマの試乗記をはじめ、とうの昔になくなってしまったとんでもない希少車たちについて、彼は積極的に筆を振るっている。 その守備範囲はとにかく幅広く、モータースポーツ、モーターショーなどのイベント取材は当然のこと、ヤングタイマーでもクラシックでもヴィンテージでもなんでもござれ。僕自身、彼の記事ではじめて知ることになったクルマやブランドは無数にあった。 例えばKrieger(クリエジェ)、Bucciali(ブッチアーリ)、Senechal(セネシャル)などというクルマの名を聞いたことがあるだろうか? フランクスキー.plで彼が熱意を注いでいる対象は、そんなコアなクルマばかりなのである。気になる人はぜひ彼の名前で検索をしてみて欲しい。記述はすべてポーランド語ではあるけれど、いまやウェブサイトのある程度の翻訳は、さほど難しくないはずだ。 ◆仏車2台持ちにして元エグザンティア乗り しかもクシシュトフはシトロエン・サクソでフランス車歴をスタートさせ、サクソをさらにもう1台乗り継いだ後、現在は家族用のプジョー807と奥様用のシトロエンC2という、フランス車2台持ちのエンスージアストでもある。過去の車歴の中にはエグザンティアもあるという。当然、フランクスキー.plで長期リポートをしている1.8リットルの直列4気筒エンジンを載せたエグザンティアにも乗っている。 僕がポーランドで彼らのエグザンティアであちこちへ連れて行ってもらったお礼に、そして経験豊富な彼の印象を聞くために、ぜひクシシュトフにはリポート車にも乗ってもらいたかった。運のいいことに、カングー・ジャンボリーの前々日の夕方に成田に到着し、丸一日、自由になる時間があるという。 結局僕とリポート車は朝一番から成田空港そばにあるホテルへ向かい、クシシュトフを連れ出し、そこから一気に横浜まで移動。日産ミュージアムをはじめ、みなとみらいとその近郊をあちこち回り、夕方には浅草まで行って彼の娘たちへのお土産を探し、最後に羽田空港そばのホテルへ届けるというミッションを見事クリアした。日中はまだかなり暑く、彼は終始2CVのイラストの描かれたTシャツ姿だった。首都高速では多少渋滞にも遭遇したが、クーラーは常に全開で、冷気をきちんと放出し続けていた。 彼の英語も僕の英語もけっこう怪しいのだが、そこは好き者同士。クルマにまつわること、シトロエンにまつわること、エグザンティアにまつわることであれば、話は尽きない。そしてこのときの模様は、クシシュトフ本人によってフランクスキー.plで翌日にはさっそくリポートされていた。僕のエグザンティアに関する彼の記述の一部を抜粋し、翻訳すると、ざっとこんな感じである。 「彼のエグザンティアは技術的には完璧の状態で、外観も非の打ちどころはありません。すべてが正常に動作し、サスペンションは東京近郊の道路の凹凸をみごとに吸収しています。車内は驚くほど静か。まるで防音材を追加しているかのようです。製造から27年が経過しているクルマとは思えません。まるで新車から2年くらいしか経っていないような印象を受けます」 いやはやなんともうれしい限り。シトロエンに精通し、さらにはエグザンティアのかつてのオーナーであり、おまけに遠くポーランドでよく似たエグザンティアを長期リポートしている彼にここまで評価してもらえるとは! 今のコンディションを維持し、さらに乗り心地の良さや快適性を追求しなくては!! と、僕は改めて思ったのだった。 なお、翌日のカングー・ジャンボリー2023は残念なことに雨に祟られてしまったそうで、富士山はかろうじて見ることができたらしい。クシシュトフは「ポーランドに帰国後、風邪を引いてしまったよ」と悔しそうなメールを送ってきたのだった。 別れ際、クシシュトフは僕に、2024年はフランクスキー.plが創立20周年を迎えること、そしてシトロエンXMも生誕35周年を迎えるので、それらのイベントを計画していることを教えてくれた。ぜひまたどこかで会おう、と互いに口にしたものの、その時僕は、まだ何も考えていなかった。ましてポーランドに、このわずか7カ月後にまた訪れることになるとは、思ってもみなかった……。 次回のリポートでは、なぜ僕がふたたびポーランドに向かうことになったのか。そして、なぜポーランドだけでなく、最初に隣の国であるリトアニアまで目指すことになったのか……。その経緯をご紹介する。 追記 ここまでのリポートで紹介しきれていなかったが、この秋に前後して行ったランプ類の点検、確認についても今回記しておく。詳細については写真ギャラリーを確認して欲しいが、明細は以下の通り。例によって作業内容と工賃が1行目で()内が部品代となる。 ※価格は2023年9時点のもの ・室内と荷室内の電球交換およびコンタクト・スイッチ交換 4,800円 (※ランプ5w 2個 220円、コンタクト・スイッチは解体車のプジョー206を流用 0円) ■CITROEN XANTIA V-SX シトロエン・エグザンティアV-SX 購入価格 7万円(板金を含む2023年12月時点までの支払い総額は279万2253円) 導入時期 2021年6月 走行距離 18万2201km(購入時15万8970km) 文と写真=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=フランクスキー.pl(francuskie.pl)/カークラフト (ENGINEWEBオリジナル)
ENGINE編集部
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