DV原因の離婚の場合はリスクやデメリットも…離婚後の「共同親権」導入、他国の制度などを専門家が解説
◆親権争いによる「子どもの精神的な負担」を減らせる?
吉田:離婚後の”共同親権”導入のメリットは何でしょうか? 塚越:この問題は賛否が分かれているのですが、まずメリットは、親権争いによる子どもへの精神的負担を軽減できることです。離婚後もお互いが協力して子育てをするので、負担が偏らなくなります。子どもがどちらか一方と生活を共にしていても、離婚後の面会交流のトラブルが少なくなると言われています。 基本的に共同親権は、子どものことを父と母で話し合うのですが、進学先を公立校か私立校にするかといった重要事項では、両親の意見が折り合わないと裁判所が判断することになります。一方で(食事や習い事などの)日常生活のこと、緊急手術を受ける必要があるといったような急ぎの場合は、一方の親だけで判断できるようにするとのことです。 養育費については、取り決めがなくても子どもと同居している親が、別居している親に養育費を請求できる「法定養育費制度」を創設し、支払いが滞った場合は財産差し押さえなどができるようにするということです。
◆DVなどが原因で離婚の場合はリスク・デメリットも
ユージ:そんな共同親権ですが、導入反対の声も上がっていますね? 塚越:DVなどが原因で離婚したケースは、単独親権でDVした側は関わらないほうが良いです。しかし現在の日本では、密室で起きるDVは証拠を出せなかったり、暴言などの精神的なDVの場合は、裁判所が判断できなかったりする場合もあります。 そうしたなかで共同親権が認められてしまうと、加害者に住所などを知られるリスクがありますし、引っ越しをするにも、もう一方の親権者の許可が必要になるため、反対される恐れもあります。離婚を第三者(裁判所)が裁くので、どうしても円満にはならないことが多くなるのですが、こういったリスクも考える必要があります。 また、共同親権になった場合、一緒に住んでいない親が異議申し立てをすることが増えて、家庭裁判所の業務が圧迫されることも予想されます。アメリカでは一方の親権者が法的な申し立てを連発するlegal abuse(法的虐待)が問題にもなっています(※一方の親権者が法的な異議申し立てを連発する嫌がらせ行為。裁判所のリソースを圧迫すると同時に、法的虐待を受ける側の親権者には対応労力やストレスがかかり、裁判費用の支出で経済的なダメージも受ける)。 両親の関係が悪い場合、やはり対立が多くて子どもについての決定がこじれる可能性があり、賛成派の意見である「協力した子育て」が、むしろ難しくなるという意見もあります。 さらに言うと、調停や親子の面会をサポートする民間の第三者機関も、運用面で混乱することが考えられます。