【親孝行物語】「長男の“毒嫁”のせいで家族仲は険悪に…」75歳女性が夫の没後に気づいたこと~その1~
聡明な長男と、ぼんやりしている次男
海外赴任から帰国したのは、長男が小学校に上がる年だった。 「4年間も向こうにいて東京に帰ってくると、バブル経済が始まる前で“ああ、まだ我が国は貧しいな”と。戦争で文化が徹底的に破壊され、ハリボテみたいな家ばかりで。夫も唖然としていました。息子たちが学校に通うようになり、気づいたのは、聡明で勉強ができる長男に対し、次男がぼんやりしていること」 次男はいつも学校の先生から、呼び出されていた。 「当時、忘れ物をした生徒のグラフが教室に張り出されており、忘れ物をすると、方眼用紙に丸いシールを貼る。それを見ると、圧倒的に次男のものが多い。先生に“僕は忘れ物が多く、皆に迷惑をかけています”と反省文を書かされるなど、精神的な体罰が“当たり前”でした。学校には学校のルールがあるから仕方ないとして、そういう次男が不憫で、長男よりも可愛がってしまったんです」 長男は自分で道を切り開いていくタイプだ。一方、次男はそうはいかないと、美和子さんは次男を大学附属の私立中学校に入学させる。 「夫も危機感を覚えたようで、中学受験の勉強を必死に教えて無事合格。手のかからない長男は、夫と同じように進学校から名門国立大学に進学し、建設関連の大手企業に就職。次男は10年間を私立で過ごし、友達のお父さんが経営するIT企業に入りました」 長男は1981(昭和56)年生まれ、次男は翌年に生まれていて、就職氷河期世代だが、苦労はしていなかったという。 「長男は面接を突破し、説明会を聞いて内定を蹴ったところ、“なんでウチに来ないんですか”と連絡が何社もありました。次男はスルッと決めてしまった」 美和子さんの親としての苦労は、次男の小学校時代のみだった。 「ずっと楽をしてきたから、因果は巡るんですよ。長男の“お嫁さん”には、本当に苦労しました。夫は5年前に亡くなったんですが、孫の顔も見せてもらえませんでしたし、長男夫婦のことを心配しながら亡くなりましたから」 長男が結婚するまで、家庭は穏やかだったという。 「家庭は小さな会社を経営するようなもの。余裕がある資金繰りと、努力をしていればうまく行くんです。就職した息子たちが夫と3人で仕事の話をしていることもありました。ところが長男の嫁のせいで、家族がめちゃくちゃに」 長男は女性を遠ざけていたところがあったという。性格も明るい方ではないため、恋人ができたという話は聞いたことがなかった。 「だから彼女に夢中になっちゃったんでしょうね。結婚したのは、派遣社員の女性です。職場で向こうから告白されて、付き合うようになったと。33歳のとき、初めて彼女を家に連れてきました。お人形さんみたいに可愛い子だったことと、コーヒーを出すと、カップを持ち上げて、どこのメーカーのものか見たことに驚きました」 彼女の経歴を聞くと、実家が裕福ではないため、奨学金を得て大学に進学するも、就職に失敗。奨学金を返済しながら働いているという。 「夜の仕事もしてたようで、息子は苦労しているところに惹かれたみたいです。彼女に趣味を聞くと“節約だ”と言い、前の月から電気代が10円少ない請求を見ると、幸せな気持ちになると楽しそうに語っている。ウチは電気もガスも使いたい放題ですし、いいものにはお金を惜しまない。夫も“この子は合わない”と思ったんでしょうね。彼女が帰った後、長男に“ちょっと結婚は考え直してみない?”と言ったのですが、長男は聞く耳を持たない。そのうちに彼女が妊娠し、結婚することになったんです」 当然、派遣社員なので、当時は産休も育休もない。嫁は専業主婦になった。 【老後のために節約することが最大の美徳という長男の嫁……その2は関連記事に続きます】 取材・文/沢木文 1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。
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