ロシア非難決議への賛同国数が「激減」する…ここへきて「ウクライナ」の求心力が「急低下」している「3つのワケ」
欧米諸国に対する不信感
第二に、ウクライナを強力に支援する欧米諸国に対して、世界各国の根深い不信が高まっている。たとえば国際法において、イスラエルのガザと西岸の占領政策が違法であることについては、広範な了解がある。世界の大多数の諸国は、パレスチナを国家承認している。それにもかかわらず、米国を中心とする欧米諸国は、イスラエルに武器支援をし続けている。これは二重基準以外のなにものでもない。欧米諸国は、パレスチナの占領を通じた入植政策を、イスラエルに武器を提供して実態として支援してしまっている。ところがその同じ欧米諸国が、ウクライナの占領については、ウクライナに武器を提供して抵抗を支援しなければならない、と主張している。残念ながら、世界の大多数の諸国にとっては、容易に納得できる話ではない。世界の大多数の諸国が、欧米諸国に追随することに警戒的になるのは、やむをえない。 今回の「平和サミット」に参加し、共同宣言に署名をしたアフリカ諸国の中の筆頭格は、ケニアだ。ケニアのルト大統領は、今年5月にアメリカを訪問した際、バイデン大統領に、「ケニアはアフリカ大陸で最初のアメリカの同盟国だ」と言わしめた。しかし、そのケニアですら、「平和サミット」会議中の演説において、「ロシアの侵略も違法だが、欧米諸国によるロシア資産の収奪も違法だ」と指摘した。 欧米諸国が中心になって、強くウクライナ支援を訴えれば訴えるほど、世界の大多数の諸国は、その政治的構図に不用意に巻き込まれることに警戒的になる。欧米諸国が誘えば誘うほど、他国は欧米諸国から距離を置こうとする、という流れが顕著になっている。 ゼレンスキー大統領は、昨年10月7日のハマスの攻撃の後、熱烈なイスラエル支援の心情を吐露した。ユダヤ人としての出自から、親イスラエルのイメージが強い。当初と比せば、だいぶイスラエル一辺倒の姿勢を和らげようとしているとも評される。だが最初に作られたイメージが強すぎて、その後の微妙で穏健な言い回しでは、印象を変えることができない。実際のところ、ウクライナのガザ危機への態度は、微妙である。停戦要請決議やパレスチナ加盟決議など、大多数の諸国が賛成票を投じた国連総会における投票行動の機会において、ウクライナは棄権を繰り返している。ウクライナは、公式にはパレスチナを国家承認している国に入っているが、承認したのはまだソ連の一部の共和国だった時代の1988年のことだ。現在のゼレンスキー政権は、アメリカに気を遣うあまり、中東における違法な占領の問題を語ることができないなっており、二重基準に加担している、という印象が広範に共有されてしまっている。 ガザ危機でイスラエルへの非難が高まると、ウクライナへの支持は減っていく、という構図が顕著になっている。ガザ危機後の国際世論の動向は、ウクライナにとっては、容易に克服できない大きな制約となっている。